<コメント>
曜日が不定期ですが、とりあえず週2回は続けて出してます。最近アニパロ小説に浮気してたので(笑)書きためた文があんまりないや。いかんいかん・・・。主人公より刑事に愛があると言われましたが、その通りでーす。書き手が引いたコース通りにしか走れない主人公よりサイドキャラを書くのは楽しいけど、いかんせん、それでは自分で自分のパロを書いてるようなもんです。自粛せねば。読者も増えたようで\(^O^)/わーい!!張り切ってます。

:::::::::::::::::::::
<本文>

「長いこと待たせて、悪かったね。君が・・・篠宮君かい?」
 第一発見者と目星をつけた少年に濱田が話しかけると、もう一人の少年が彼の前に進み出た。
「篠宮優樹は俺です。」
「うん?では君がこの・・・。」
 死体と言いかけ、その生々しい表現がこの場にそぐわない気がして濱田は口ごもった。
「石膏像の・・・中の物を最初に見つけたわけだな。ではそのときの状況を、すまないがもう一度話してもらえるかな。」
「待ってください。最初に死体を見つけたのは僕です。」
「ああ、君が秋本遼君か。」
 濱田は最初の報告を書き留めた手帳に目を通した。
「違う、石膏像を割ったのは俺です!」
 濱田の思ったとおり優樹は遼を庇うつもりだったようだ。なおも言い張ろうとする優樹を手で制し、濱田は苦笑した。
「まあ、待ちたまえ。いいかね、何も君たちを容疑者扱いしてるわけじゃないんだよ。この死体が見つかった状況だけ話してくれればいいんだ。それじゃぁ秋本君から話を聞こうか。」
 石膏像を見つけて優樹がそれを引っ張り出し床に落とすまでを遼が訥々と話している間、優樹は落ち着かない様子で遼と濱田を見つめている。濱田にはその優樹の様子の方が気になった。何か知られては困ることがあるのか?それは優樹と遼、どちらにとってなのか?
 この年頃の子供にありがちな好奇心から見慣れない物に手を出し誤って壊してしまった。たまたまそこにあるはずのないものがあったことが彼らにとって不測の事態を招いてしまったのだが、ましてや男の子のすることである。取り立てて隠さなくてはならない何かがそこにあるようには思えない。
 しかし彼らの様子は何処か不自然だった。
 遼の話を聞き終わって濱田が腕時計を見ると、針は既に九時を回ろうとしている。
「すっかり遅くなってしまったな、ご両親も心配してるだろう。まだ何度か話を聞くことになるかもしれんが協力をお願いするよ。おかげで十二年ぶりに犯人を捕まえられるかもしれないんだ。おい神崎、この子達を家まで送ってもらってくれ。」
 廊下で教師から話を聞いていた神崎が濱田のところに駆け戻った。
「あの、篠宮君の保護者の方が迎えに来ているようですが・・・。」
「保護者?」
「彼が下宿している家の主人でペンションを経営している田村という方です。」
「ああ、〈スローターハウス〉のご主人か。・・・田村さんにこの子達を預けたら、明日夕方くらいにそちらに伺うと伝えておいてくれ。」
「はい、わかりました。」
 神崎は二人と連れだって廊下に出ると、少し離れた先で彼らを待っている四十代半ばの男性に会釈した。
「今日はいろいろと大変だったね。かなり疲れたと思うけど、我々が長いこと探している殺人犯逮捕に繋がる重要な証拠が見つかったんだ。これからも協力をお願いするよ。それから・・・。」
 彼は手帳から私製の名刺を取り出した。
「ここに僕の携帯番号が書いてあるから、警察に来てまで話すほどでないような小さなことでも何か思い出したら教えてくれるかい。」
 二人は一枚ずつ名刺を受け取った。
  
<コメント 1>
「熊谷先生、違います。死体で見つかったのが二人で一人が行方不明ですよ。」
「おお、濱田刑事、間違えました。何しろ昔のことなのでね。はっはっは。」
というわけでアップしたものを直すのが面倒なのでここで修正しました。ごめんなさーいm(_ _)mぺこり

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<本文>

 県警の応援を頼む事件など無いに等しい一市三町一村を管轄区域に持つ100余名のこの警察署で、永島は署長を勤めて三年になろうとしている。当時、彼が警部補として県警から捜査に加わっていたあの事件はつい最近のことのように彼の脳裏によみがえった。
「随分と大所帯で来たものですね、それも署長自らですか?」
「おお、濱田。久し振りだな。」
 濱田は美術室の入り口に立っていた永島に軽く会釈をして神崎を手招きした。
「神崎です、よろしくお願いします。」
 永島が背の高いこの若い刑事を観察するように見つめると、居心地悪そうに神崎は目をそらした。
「ああ何処かで会った気がしたと思ったら、君はこの学園の生徒ではなかったかな。」
「何だ、そうだったのか。それならそうと早く言わないか。」
「・・・・・申し訳ありません。」
 不機嫌そうに濱田に詰め寄られて神崎は慌てて謝罪した。そう言うことならば彼がふさぎ込んでいた理由も納得できる。
「それにしても署長、ここには署の半分くらいの人間が来てるんじゃないんですか?余計なことを言うようですがこれほどの人数は・・・。」
「うむ、つい私が自分で現場を見たくて出向いたものでなぁ。皆が付いてきてしまったのだ。まあ、後は君に任せて引き上げるとしよう。署が空になっていては何かあったときに困るからね。」
「わかりました。後で伺います。」
 永島は現場を管理するための警官を数名残してその場を後にしたが、濱田には直接捜査に関わりたいという彼の気持ちが汲み取れた。濱田の上に立ち捜査の陣頭指揮を執っていたのは他ならぬ永島であったからだ。
 永島を見送り、濱田は神崎に発見者である学生を呼んでくるように命じた。
 連れてこられた二人の男子学生のうち一人はいかにも運動部で体を鍛えていると思われる格好のよい体格で、程良く日に焼けた褐色の肌と端整な顔立ち、意志の強そうな瞳の持ち主であった。立ち姿の姿勢の良さ、身のこなしからおそらくは武道、それも剣道をかなりやっていると濱田には一目でわかった。
(そんなに挑戦的な目で我々を睨むこともないだろうに・・・。)
 警官を威嚇するかのような目はもう一人の男子学生を守らんとするがためなのか?
(どうやら第一発見者はこっちらしいな。)
 もう一人の方は背の高さはそれほど変わらないが少し小柄に見えるのは細身の身体のためかもしれない。色白で不健康そうな高校生が濱田は苦手だった。特に顔立ちが綺麗な男など話しかけるのに気後れしてしまう。しかし彼は濱田が心配するようなタイプとは少し違うようだった。確かに女のような綺麗な顔立ちはしているが、その瞳からは男らしい気概が強く伝わっていた。

(つづく)


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<コメント 2>
はい、わかってます。どうしてもこんなカップル(違う!)ツーショットになってしまいました。おきまりです。何処かで聞いたよーなみたよーな・・・。でも外せませんでした。美少年とスポーツマン、クウーッ!ってなかんじです。ああぁ、いいんだ。もう。外見かかなくてもよかったかもしれない・・・(ガクリ)



<コメント>
あら凄い!ちゃんと続いてるわ(笑)やれやれ、やっと学園の姿が現れましたね。(いまごろかーい?)
仕事中に読んでる人のために(笑)今回からアップする字数を減らして回数を多くしようと思います。
地名は特に記していませんが、房総のはじっこのその辺がモデルです。(なんだそりゃ?)
:::::::::::::::::::::
<本文>

 バス通りから海に向かって、地を這うように曲がりくねった低い松の防砂林の間に綺麗に砂を除かれた石畳の遊歩道が続いている。懐古趣味的なガス灯を模した暗い街灯の下を十分ほど歩くと、突然目の前が開け、岸壁に激しく波が叩きつける音と強い潮の香が急に強く感じられた。
 岬の先端は申し訳程度に落下防止用の柵が回らせてあったが、飛び降りる気になれば何の役にも立たない程度の代物である。しかしこの断崖から飛び降りようとする者があるとすれば、死を覚悟した者に他ならないだろう。波打ち際には荒波に削られ鋭く切り立った岩が黒々と連なっていた。
 海に向かって左手に、太平洋戦争時代、東京湾を監視する目的でつくられたという小さな灯台と、この人気のない場所にはそぐわないほどに立派な社がある。灯台の方はうち捨てられさびれていたが、社は潮にさらされるこの場にありながら綺麗に体裁を整えているところを見るときちんとした管理者がいるのだろう。その社の裏手から急な細い石段が海岸へと続いていた。
「日が暮れてからここを下りるのは気が進まんのだがなぁ。」
「濱田さんが早いほうから行こうと言ったんですよ。」
 確かに現場に早く到着するにはこの道しかない。若い学生やまだ二十代の神崎ならともかく、既に五十をすぎている濱田にはきつい下り坂だった。手摺りに捕まっていても眼下の波の音がどうにも気になって仕方がない。月明かりで海が明るいのがせめてもの救いだった。
「急がないと鑑識の車の方が先に着いてしまいますよ。」
 気持ちからかうような口調で言う神崎に濱田は少し気が楽になった。やはり相方にはいつもの調子でいてもらわないとやりにくい。 鑑識の連中を乗せた車は岬を大きく回って海岸沿いの道を来るため彼らより二十分はよけいに時間がかかるだろう。
「濱田さん、叢雲学園です。」
 それは黒く切り立つ岸壁を背後に月明かりに浮かび上がった白亜の要塞だった。


<コメント>
こんにちは。今回から第三者の目からのお話になります。登場する刑事さんはかなり自分の好みが入ってますが、イメージとしては・・・内緒です。

:::::::::::::::::::::
<本文>

現場に向かう車の中、濱田は少し窓を開け煙草に火をつけた。高速を降りてから九十九折りに連なる海岸沿いの道をもう暫く走っている。夏場海を目当ての若者で真夜中までにぎわうこのあたりも初秋のこの時期に至っては、すれ違う車の影もまばらだ。窓の外から風に乗って運ばれてくる潮の薫りは、彼が普段感じている油の混じったようなそれとはまるで違った。
「潮のにおいがやっぱり違うなぁ、神崎。」
 ハンドルを握る若い刑事は何も答えない。普段は口数が多く明るい性格の男である。現場まで長時間車で移動しなくてはならないときはいつもそのおしゃべりに辟易とするところなのだが、今回は得意の推理を披露することも、犯人に対しての怒りをまくし立てることもしない。
(確かこの辺の出身だと聞いたことがあったな・・・。)
 だとすれば当時丁度高校生ぐらいの彼が、例の事件にかなり強い衝撃を受けたとしても不思議はない。
(まさかそれで刑事になったというわけではないだろうが・・・。)
自分が捜査をすることになって緊張しているのかもしれなかった。
「後十分ほどで現場に到着します。」
 ああ、と低く言葉を返して濱田は事件の方に頭を切り換えた。

 今から十二年前、房総半島のはずれの小さな岬町で三人の女子学生が一ヶ月の間に続けて行方不明になった。丁度、夏休み中の開放的な生活からまた窮屈な学校生活にもどってそれに馴染むことの出来ない生徒の家出がよくある時期である。捜索願を出された警察も本気で捜す様子もないようだった。しかし一人目の女子学生の捜索願が出されて一週間後、事態は急変した。
 波にもてあそばれ、岩にたたきつけられ、彼女は見る影もない無惨な姿で長い黒髪を漁船の網に絡ませて引き上げられたのだ。身体にくくられたコンクリートブロックが、明らかに何者かの手による殺人なのだということを物語っていた。
 二人目の捜索願が出されたとき、この女子学生が次の被害者になると予想できた者はまだいなかった。そして彼女もまた、うち捨てられた人形のように波間に哀れな姿で浮かんでいるのを発見されたのだ。だが何れも警察は犯人に繋がる手がかりを何一つ見つけることが出来なかった。
 三人目の捜索願が出されたときは、最初から同一犯による連続殺人の可能性を考慮しての捜査が行われた。警察の懸命な努力に関わらず十二年の間彼女は見つかってはいない。
 当初から捜査に関わっていた濱田は、十二年の間に担当の捜査官が一人二人と減っていくなかで彼だけ頑としてこの事件から外れることを拒み続けてきた。そして今や専任の担当刑事は濱田ただ一人となり、相方の神崎の仕事をサポートしながら地道に捜査を続けている状況だった。
 (見つかった頭部は行方不明になっている女子学生のものに違いない。)
 連絡を受けた彼は確信していた。
(やっと犯人に近づくことが出来そうだな・・・。)
 殺人事件は二人の被害者を出し犯人は逃走を続けているというのが大方の見方で、三人目の彼女が事件の被害者だという証拠は今まで何もなかった。
(ヤツは三人目で目的を果たしたのだ。)
 犯人が遂げようとした狂気の動機はまだ分からない。しかし今度こそ犯人の輪郭を描くことが出来る。
(ヤツは明らかに意図して死体に手を加えている・・・!)
 濱田は高ぶる感情を抑えきれずにいた。

 


<コメント>
こんにちは。4回目のお話をアップしました。文章力がなくて思った表現が出来ないことにいらいらしたりしてますが終わりまで書くのが目標です。どうぞおつきあい下さいね。

:::::::::::::::::::::
<本文>


(たぶん自分は呼ばれたのだ。)
 遼は窓際の壁にもたれかかり、その赤黒く乾いた小さな塊を見つめた。一瞬漂ったかび臭いような、ほこり臭いような、饐えた匂いはもう無い。
(君は誰だ?)
 不思議なことに頭部に残る長い黒髪は、未だ生ある者が所有するかのように黒々として艶やかな美しさを保っている。彼に恐怖心はなかった。
 窓の外はいつしか深い闇に覆われ、海から吹き込む冷たい風が汗に濡れたシャツを背中に張り付かせる。いつこれほどの汗をかいたのか?今になって寒気を感じるまで気が付かなかった。
 波が岩に砕ける音が風に巻き込まれて海の底からの咆吼に聞こえる。ひときわ猛々しい叫びが風に乗り、カーテンを舞い上がらせ彼女の黒髪をゆらした。彼を見つめる、悲しみを湛えた二つの黒い穴。
「君は誰だ?」
 ヴィジョンを見ることは出来る。しかし答えを聞くことは出来ない。彼女が自分を呼んだのだとしても、何もできはしないのだ。
 優樹に呼ばれて当直の教師と所用で来ていた二人の教師が美術室に駆けつけてきた。優樹の説明だけでは当然本気にしていなかったのだろう。疑い深そうにそれをのぞき込んだ三人はいきなり顔色を変え、一人が警察に連絡を取るためあわてて職員室に引き返した。残った二人は小声でなにやらひそひそと話し込んでいる。どうやらこの死体に心当たりがあるようだった。
「熊谷先生、もしかしてこの死体が誰なのか知ってるんじゃないんですか?」すかさず優樹が教師の一人に詰め寄った。
 熊谷は優樹の所属する剣道部の顧問で、実家の道場では小学生を相手に剣道教室を開いている。優樹とはもう長いつきあいだ。
「うむ、実は十何年か前にこの高校で女子学生が何人か行方不明になってなぁ。一人が死体で見つかり後の二人が・・・。」
「熊谷先生!生徒になんてことをおっしゃるんですか!」
 熊谷の後ろにいた若い女性教師は、顔を引きつらせながらも努めて冷静さを保とうとしているようだった。しかしその裏返った声はかすれて甲高く響いた。
「刈谷先生はご存じでしたか?」
熊谷は女教師の言葉など気にとめる様子もない。刈谷は二人の生徒を伺い見て、顔をしかめた。
「・・・噂程度には。」
 刈谷は今年着任したばかりの生物教師だ。その彼女でさえ知っているこの学園の事件とは何なのだろう。
「熊谷先生、詳しいことを教えてもらえませんか?」
 優樹はもう一度熊谷を問いつめた。
「うーん、そうだなぁ話してやっても良いと思うんだが。ところでおまえは何で美術室なんかに居たんだ?部活は随分前に終わったはずだが。」
「俺はこいつを迎えにきたんだ。」
「彼は?」
「秋本遼。クラスは違うけど親同士が知り合いでさ。今日俺の下宿に泊まりに来ることになってるんだ。」
「秋本?・・・秋本遼か!」熊谷の表情が険しくなる。
「すまんな、やはり俺からは何も言えんよ。多分警察が・・・いや、おまえのおじさんが教えてくれるだろう。」
「えっ?」
 自分たち二人に何か関係あることなのだろうか?優樹は遼を見た。彼は優樹と熊谷をいぶかしそうな目で見つめている。
「警察が、来ました。」
 職員室から戻った教師の声に熊谷が出入り口から顔を出すと、そこには意外なほど多くの警察官が立っていた。

「コメント」

こんにちは
このお話を読んでくださっている方がいらしてとても嬉しいです。感想なんかいただけると感謝感激!
今回やっとミステリっぽくなってきましたが、あまり暗くない楽しめるお話にしたいと思っています。(出来るかなー?)
問題は書くペースですよねぇ。ここまでは書きためてあったんだけど、この先遅れないようにしなくては。週二回、1800字のペースでがんばるぞ!(オー!!)

:::::::::::::::::::::
「本文」


「その・・・おまえがヴィジョンて言ってるやつだけど、この場所で見たのか?」
「えっ、あ・・・うん。正確にはあの棚の下。ほら、何か黒い布がかぶってるものがあるだろ。それが何かなって思ってさ、布を取ろうとしたんだ。そしたら急に・・・。」
「OK、じゃあそいつを見てみようぜ。」
 頭に響いたあの声が鮮明によみがえる。遼は顔色を変えた。
「関係ないと思うよ。たまたまそのときに重なっただけで・・・。」
 違う。関係があるのだ。だからこそその正体に近づきたくないのが本当の気持ちだった。
「いや絶対なにかある。」
 優樹は逆に原因を突き止めることで遼を救いたかった。彼は棚の下の黒い布に覆われたものを引きずり出して上に載せた。
「思ったより軽いな。それに・・・。」
 中でかたかたと何かが動く音がする。彼はそっと布をはずした。
「あっ・・!」
 まぎれもない、遼の見た少女だ。真珠のように美しく磨き上げられた白い石膏像。ただ耳の下にあるどす黒い3センチほどの染みから放射線状に幾筋かの亀裂がはしっている。
「この学校で殺人事件があったなんて聞いたこと無いけど、何かの手がかりかもしれないぜ。石膏像に隠された死体・・・なんてな。」
「もういいよ。早く元に戻して帰らないと成田先生に教室を貸してもらえなくなるよ。」
「あ、そっか。悪い悪い・・・。」
 何か引っかかるものがあったが、遼の心配の方が今は優先事項である。彼が見たものに関しては後で調べてみてもいいだろう。
「おじさん、おまえの来るの毎週楽しみにしてるんだぜ。いっそ俺と一緒にあそこに下宿しちまえよ、寮なんか出てさ。」
「そんなわけにはいかないよ。でも田村さんのロールキャベツ、あれ好きだな。奥さんの焼いてくれるパンも。」
「おまえが好きだって言えば毎日作ってくれるんじゃないか?俺は肉じゃがとか納豆とかの方がいいけどな。」
 優樹は石膏像に元通り黒い布をかけた。そして・・・。
「おっと、手が滑った!」
 わざと床にそれを落とした。鈍い音がして石膏像が二つに割れる。遼の様子で予想はしていたとはいえ動揺を隠しきれない声で優樹はいった。
「俺に嘘付くなよ。おまえ、これを見たんだろ?」
 中から出てきたのはひからびた、髪の長い人間の頭部だった。



 



「コメント」

「学校の怪談」のノリで書くつもりが、ずいぶんシリアスになりそう。でも自分のことだから結局エンターテイメントとして楽しい話が好き。キャラにはジャニーズの二宮君とかイメージしてたりして。

:::::::::::::::::::::
「本文」

「おい秋本、迎えに来てやったぞ。」
 篠宮優樹は勢いよく美術室のドアを開いた。
「遼、いないのか?」
 先に帰ったはずはない。ドアの鍵は開いているし、週末はいつも彼の下宿先の叔父が経営しているペンションに泊まりに来ることになっているからだ。
「トイレかな?」
 肌寒さを感じ窓を閉めようと窓際に近づいて、彼は床に踞るように座り込んでいる遼に気が付いた。
「なんだいるなら返事くらいしろよ。」
 まるで生気のない石膏像のように彼は身じろぎもしない。そのただならぬ様子に優樹は慌てた。
「遼、大丈夫か?」
 反応がない。
「おい、遼!」
 肩を掴み軽く揺すってみる。すると微かな声が返ってきた。
「大丈夫、なんともない・・・。」
「何ともないようには見えないぞ。どっか具合悪いのか?ちょっと待ってろ、今当直の先生を・・・。」
 彼は優樹の手を掴んだ。
「見たんだ・・・また。」
「見たって何を・・・・あっ!」
 優樹にははすぐに思い当たることがあった。
「だっておまえ、最近見えなくなったって言ってたじゃないか。もう2年くらい見てないって。」
「うん、そうなんだけど・・・あれは確かにいつものやつだよ。」
 顔を上げた遼の頬に涙の後があるのを見て、優樹は友達を苦しめる得体の知れないものにいい知れない怒りがこみ上げてくるのを感じた。

 遼の両親は別居中で、母親は一人息子の彼を連れ一年前東京から実家のある房総半島館山市に帰ってきた。この地はもともと彼が中学一年の夏まで住んでいたところで優樹とは家が近いこともあり、幼稚園・小学校と一緒に通うほど仲が良かった。二人はたくさんの友達と日が暮れるまで、自然のままを残す海辺や野原を毎日走り回っていた。
 ところが中学校に入ると状況は一変し、彼は陰湿ないじめに毎日泣かされることになる。それは彼の持つ、ある特殊な能力のためだった。
 他人に見えないものが自分には見える。彼がそのことに気づいたのは大人との意志疎通が出来るようになってきた5歳ぐらいの頃からだろうか。
「猫さんが寝てるよ。」
「踏んじゃだめ、鳥さんがいるんだよ。」
そう言って彼は何もいない公園のベンチや地面を指さした。彼が見るもの、それはかつてその場所で生き、死んでいった生物の残像だったのだ。
 もともと言葉の遅いことを母親や周りの人間が心配していたためか、彼の少し変わったものの見方は初めのうちはとりたてて問題にはならなかった。しかし、小学校に上がる頃にはさすがに心配になった両親は彼を医者に診せ、場合によっては専門の学校に入れることを考え始めたのだ。泣きながら父親の説得に応じる母親の姿を見て、彼は見えるものを見えると言うのを止めてしまった。両親は安心し、彼も普通に小学校に通うようになったが、成長するに伴い彼の能力はやがて過去に焼き付いたその場所の映像をより鮮明に目の前に映し出すようになっていったのである。
 普段の生活の中、何気ない場所で見える過去のヴィジョンは慣れてしまえばそれほど困ることにはならなかった。時折学校やファーストフード店、またはゲーセンでいるはずのない友人に声をかけてしまい周囲の失笑を買うぐらいでしかない。しかし事故や自殺、あるいは殺人の起こった現場においてはそれは言い難い苦痛を彼にもたらすのだ。命が失われる瞬間の恐怖、悲惨かつ凄惨な光景を目の当たりに見て、彼は悲鳴を上げ、時に気を失うことすらあった。
 その奇行はすぐに噂となり、クラスメイトが彼を避けるようになって、陰湿ないじめが始まった。幼い頃は彼の言うことを素直に信じてくれていた仲間さえも既に味方ではなかった。ただ一人をのぞいては。

「それにしても、ひどい顔だな。今にも死にそうですって感じだぜ。」
「いやだな、そんなにひどい顔してる?」
 遼はそのときやっと自分が涙を流していたのを優樹に見られたことに気づいて恥ずかしさにうつむいた。
「あー、まあそれほどでもないけど・・・。」
 自分の言葉がこれ以上友人を傷つけないように気をつけなければ。優樹は深く息を吸った。
「前は例のやつが来てもそんな顔してなかっただろ。その・・・かなり酷いものが見えたのか?」
「う・・・ん。久しぶりでショックが大きかったんだと思う。」
「・・・で、何が見えたんだ?」
 遼は目を閉じて見たものをゆっくりと思い出していった。
「この高校の制服を着た女の子。窓から見える海を描いている。誰かが入ってきて・・・・。」
 彼の表情がゆがむ。
「彼女を・・・殺した。」
 優樹の顔色が変わった。
「それってもしかして殺人事件か?」
「たぶん。」
「おまえが言うなら本当のことだよな。」
 遼はまた涙が出そうになるのを必死でこらえた。
(君だけが僕をいつも信じてくれた。)
 そう、中学でいじめに遭いつらかった毎日を支えてくれたのは優樹だけだったのだ。
 遼に嫌がらせをするクラスメイトを呼びだしては彼をかばって優樹はよく喧嘩をしていた。5歳の頃から剣道を習っている彼は暴力に訴えることこそ無かったが、迫力のある抗議に遼に対するいじめは少しづつ影を潜めていった。しかしクラスに馴染むには至らず、結局彼は父親の転勤を理由に学校を去っていったのだ。
(沈まない太陽・・・。)
 遼の心には彼に対して複雑な感情があった。

こんにちは(^^)今日初めての書き込みです。これから週1/2回のペースで物語を進めていきたいと思います。どうぞよろしく。
今回のお話は学園ホラーミステリ(のつもり)私立高校が舞台で、ミイラ化した死体を発見するところから始まります。楽しんでもらえるといいな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私立むらくも高校奇譚 1
第一回

 美術室の西側の窓は開いたままだった。透明で涼やかな秋風が運んでくる波の音は心地良いし、時折断崖を伝ってこの高台まで吹き上げてくる湿った潮のにおいも嫌いではない。しかしそろそろ風は冷たさを増し波の音も荒くなってきたようだ。気が付けば窓から射し込む西日が、イーゼルの長い影を白いモルタルの壁に黒々と映しだしている。
(もうそろそろ限界かな。)
 秋本遼はデッサン用の木炭を走らす手を止めた。
 沈みかけの太陽は、水平線上に重なり合いその向こうの夜の闇を移すかのように重く暗い灰色の雲の隙間をまるで血のように鮮やかな緋色で縁取っている。それはまるで我が物顔で天空を走る太陽が地獄に引きずり込まれる瞬間にあげる断末魔の悲鳴。彼はこの眺めが好きだった。
 椅子の背もたれに掛けてある制服の上着の内ポケットから取り出した携帯は四時三五分を表示していた。彼が文化祭のテーマに選んだのはこの教室の西からの光で陰影をつけたデッサン画である。今更時間的に制限のあるテーマを選んだことを悔やんでも仕方がないのだが、これほど日が傾くのが日に日に早くなっていくのでは、来月末の文化祭に間に合うかどうか。後は記憶を頼りに進めて仕上げで補正するしかなさそうだ。
 デッサン画を丸めてケースに納め、イーゼルを壁際の定位置に置く。デッサンモデル「アキレス」は他の石膏像の並ぶ棚に戻さなくてはならない。
 彼の所属する美術部の顧問は八街哲夫という教師だが、備品の管理について口やかましいのはもう一人の美術教師成田智子だ。使用したものを元の位置に戻しておかないと次に使いたいときに嫌みを言われてしまう。本来土曜日は3時以降使用禁止のこの教室を使わせてもらいたいと頼みに行ったときもあまり良い顔はしなかったのだが、八街先生が頼んで文化祭が終わるまでは5時まで開けておいてもらえることになったのだ。
 重い石膏像を両腕で抱え、壁に固定された八〇センチほど奥行きのある頑丈な木製の棚に戻す。そのときつま先が何かを踏んだ気がして彼は棚の下をのぞき込んだ。奥に黒い布に覆われた石膏彫刻ほどの大きさの物が置いてある。彼が踏んだのはその布だった。
(こんな物、あったかな?)
 布の中身に興味をそそられて、彼は棚の下に潜り込みそれに手を掛けようとした。
(触るな!)
 誰かが彼の頭の中で叫んだ。突然全身に冷たい戦慄が走り、全ての体毛が逆立ってゆく。開いた毛穴から虫がはいだし体中をうぞうぞと這い回るようなこの感覚。久しく忘れていた、忘れていたかったこれは・・・。
(・・・くる!)
 目の前が白く輝く。ホワイトアウト。フラッシュ・バックする音、場面。
 女の子、制服、笑顔、困惑、恐怖、懇願、叫び。ブラックアウト。
 呪縛は、来たときと同じく突然彼を解放した。冷たい汗が脇を伝い落ち、目の奥が熱く刺すように痛む。涙が頬を伝った。


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