【私立叢雲学園怪奇譚・第二部〔本章〕25】
2004年4月7日 【小説】私立叢雲学園怪奇譚[第24回のあらすじ]
◇すぐに『美月荘』から去ると思っていた日下部と鳥羽山は、事情から一夜の宿を取る事になった。表向き穏やかそうに見える日下部だが、どうやら一筋縄ではいかない筋があるようだった。女子が宿泊予定だったコテージを無理矢理借り受けたのだが……。
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<本文>
雨が降る様子はなかったが、空を覆った灰色の雲はテラスから見える湖面を暗く重い色に変えていた。楽しい気分とは言い難い不満そうな顔で、自室のある二階からリビングに降りてきた杏子に遼は手を上げる。昨夜の約束通り午前中は一緒に湖に行くため、朝食後一旦コテージに戻って画材を取ってきたところだった。
「あぁー、もう! せっかく来たのに、このお天気じゃつまんない。雨にならないといいなぁ……」
「雨は多分、降らないと思うよ。でも少し風が冷たいから、上着があった方がいいかもしれないね」
窓から空を見上げていた杏子は、遼に向き直ってにっこり笑った。
「そうだ、あたし達午後からテニスの予定なんだけど、遼くんも一緒にやろうよ。裏のブナ林の中に私設のテニスコートがあって、ラケットとシューズは貸して貰えるんだって。黎子さんは郷田さんの仕事が見たいって言ってたから、一人足りないんだ」
「テニスか……いいよ。少し身体を動かしたいし、佐野先輩に言われたように、ちょっとは鍛えないとね」
リビングの隅でカメラの準備をしていた佐野に向かって、わざと聞こえるように遼が軽口を叩くと、聞こえたのだろう佐野は、ひらひらと手を振って返した。
「やった! でもお手柔らかにね。あたし、まだテニス・スクールに通い始めたばかりなんだもん。遼くんは、小学校からスクールに通ってるんでしょ?」
「その割に上達していないけどね。以前、球技大会で優樹と試合した時もボロ負けだったよ」
「テニス部のレギュラーでなくちゃ勝つのは無理だよ、優樹は運動神経だけは良いんだもの。一人三種目しか出られないはずなのに、ほとんど出場してたんじゃない?」
二学期末のクラス対抗球技大会は、所属する部活の競技にレギュラーは出られないため、剣道部に所属し運動神経が良い優樹はいつも各競技で花形だった。昨年の大会ではテニスで対戦する事になったのだが、小学校三年からスクールに通っている遼さえも優樹に勝つ事が出来ないのだ。
「さすがにあの時は悔しかったな、テニスくらいは勝ちたかったけど」
「勉強じゃ優樹なんか足元にも及ばないのに、スポーツでも負けたくないんだ?」
「そうだね、出来れば負けたくないな」
遼の言葉に杏子が不思議そうな顔をすると、そばで聞いていた佐野が助け船を出した。
「男同志ってやつは、あらゆる面で対等か、それ以上になりたいものなのさ。秋本も男の子だからな」
それでもまだ、杏子は首を傾げている。
「ふうん……男の子ってそういうものなんだ。女の子同志だと、すごいなって思っても、あんまり競ったりしないなぁ……」
「意外だった?」
「うん……あっ、ううん、そんな事無いけど! そうだ、上着取ってこなくちゃ! 待っててねっ!」
慌てて部屋に戻っていく杏子に、了解の笑顔で遼は応えた。
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★改稿作業は意外と楽しい事が解りました。書き始めに確定していなかったキャラの性格や立場が固まっているので、台詞も随所変わってきます。
動きもどうやらスムーズに(当社比・笑)
★これからは、少しホラー色を強めに入れるつもりです。お子様読者がいらしたら、申告して頂ければ事前通知致します。(いないか?)
★改稿作業の締め切りが延びたので、出来れば週二回ペースに戻したいのですが、ちょっと頭がいる展開になりそうなので、もうしばらく週一回ペースでの更新お許しを。
◆ご意見ご感想はホーム掲示板にどうぞ!裏設定ぼやきもご覧になれます。
「MURAKUMO」
http://mypage.odn.ne.jp/home/kazatoyou
◆hotmail:youkazato@hotmail.com
でも、お気軽に。MSNメッセアドにもなっています。
◇すぐに『美月荘』から去ると思っていた日下部と鳥羽山は、事情から一夜の宿を取る事になった。表向き穏やかそうに見える日下部だが、どうやら一筋縄ではいかない筋があるようだった。女子が宿泊予定だったコテージを無理矢理借り受けたのだが……。
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雨が降る様子はなかったが、空を覆った灰色の雲はテラスから見える湖面を暗く重い色に変えていた。楽しい気分とは言い難い不満そうな顔で、自室のある二階からリビングに降りてきた杏子に遼は手を上げる。昨夜の約束通り午前中は一緒に湖に行くため、朝食後一旦コテージに戻って画材を取ってきたところだった。
「あぁー、もう! せっかく来たのに、このお天気じゃつまんない。雨にならないといいなぁ……」
「雨は多分、降らないと思うよ。でも少し風が冷たいから、上着があった方がいいかもしれないね」
窓から空を見上げていた杏子は、遼に向き直ってにっこり笑った。
「そうだ、あたし達午後からテニスの予定なんだけど、遼くんも一緒にやろうよ。裏のブナ林の中に私設のテニスコートがあって、ラケットとシューズは貸して貰えるんだって。黎子さんは郷田さんの仕事が見たいって言ってたから、一人足りないんだ」
「テニスか……いいよ。少し身体を動かしたいし、佐野先輩に言われたように、ちょっとは鍛えないとね」
リビングの隅でカメラの準備をしていた佐野に向かって、わざと聞こえるように遼が軽口を叩くと、聞こえたのだろう佐野は、ひらひらと手を振って返した。
「やった! でもお手柔らかにね。あたし、まだテニス・スクールに通い始めたばかりなんだもん。遼くんは、小学校からスクールに通ってるんでしょ?」
「その割に上達していないけどね。以前、球技大会で優樹と試合した時もボロ負けだったよ」
「テニス部のレギュラーでなくちゃ勝つのは無理だよ、優樹は運動神経だけは良いんだもの。一人三種目しか出られないはずなのに、ほとんど出場してたんじゃない?」
二学期末のクラス対抗球技大会は、所属する部活の競技にレギュラーは出られないため、剣道部に所属し運動神経が良い優樹はいつも各競技で花形だった。昨年の大会ではテニスで対戦する事になったのだが、小学校三年からスクールに通っている遼さえも優樹に勝つ事が出来ないのだ。
「さすがにあの時は悔しかったな、テニスくらいは勝ちたかったけど」
「勉強じゃ優樹なんか足元にも及ばないのに、スポーツでも負けたくないんだ?」
「そうだね、出来れば負けたくないな」
遼の言葉に杏子が不思議そうな顔をすると、そばで聞いていた佐野が助け船を出した。
「男同志ってやつは、あらゆる面で対等か、それ以上になりたいものなのさ。秋本も男の子だからな」
それでもまだ、杏子は首を傾げている。
「ふうん……男の子ってそういうものなんだ。女の子同志だと、すごいなって思っても、あんまり競ったりしないなぁ……」
「意外だった?」
「うん……あっ、ううん、そんな事無いけど! そうだ、上着取ってこなくちゃ! 待っててねっ!」
慌てて部屋に戻っていく杏子に、了解の笑顔で遼は応えた。
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★改稿作業は意外と楽しい事が解りました。書き始めに確定していなかったキャラの性格や立場が固まっているので、台詞も随所変わってきます。
動きもどうやらスムーズに(当社比・笑)
★これからは、少しホラー色を強めに入れるつもりです。お子様読者がいらしたら、申告して頂ければ事前通知致します。(いないか?)
★改稿作業の締め切りが延びたので、出来れば週二回ペースに戻したいのですが、ちょっと頭がいる展開になりそうなので、もうしばらく週一回ペースでの更新お許しを。
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