<本文>
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 人の話し声に気付いて、ゆっくり目を開けると、カーテンが引かれているのか、それとも既に陽が落ちたのか、薄暗い部屋のベッドに自分は寝かされているようだった。どうやらコテージの部屋らしい。
「よかった、気が付いたようだね。」
 冬也が安心したように、身を起こした遼の顔を覗き込んだ。
「あの、すみません、迷惑かけたみたいで……。」
 改めて周りを見回せば、冬也の他に友人達が全員此処にいる。少し恥ずかしい思いで、遼は俯いた。
「少し気を失っていたようだが外傷もないし、脳や心臓に問題がある訳では無さそうだ。レース経験から容態を判断することに慣れているが、私の見たところ心配いらないだろう。優樹の応急手当が功を奏したようだしね。」
 優樹は何処に、と、姿を捜せば、一人離れて腕を組み壁にもたれかかっている。その怒ったような顔つきに、遼は苦笑した。理由が解っているからだ。
 佐野が心配そうに、冬也の横から顔を出した。
「緒永さんと須刈と篠宮の三人がかりで此処に運んだんだぜ、あ、でも坂の途中で狭くなってた所は篠宮が一人で抱えてたな。昨夜も勉強で寝るの遅かったそうだし、疲れが出て貧血起こしたんじゃないか? おまえ、もうちょっと身体鍛えた方がいいぞ、篠宮に軽々抱えられるくらいだもんなぁ。」
「相変わらずデリカシー無いねぇ、おまえ。」
 アキラが後ろから佐野の口を手で塞いだ。
「さあ、後は少し休んだ方がいい。佐野君の言うとおり、昨日の移動で疲れているのに遅くまで机に向かっていたのが悪かったんだろう。みんなは昼食を食べてきなさい、ここは私が付いているから。」
 冬也の言葉で、やっと緊張から解放された顔になった遥斗と宙が、遼に軽く頭を下げてドアに向かう。
「優樹先パイ、お昼食べに行きましょう。」
 遥斗の誘いに優樹は壁から離れた、が、そのまま冬也の前に立つ。
「俺が付いてます。」
「いや、しかし……。」
 この場合、保護者としての責任を果たすべきだと言いかけた冬也の肩に、アキラが手を置いた。
「篠宮に、任せてやって下さい。」
 眉をひそめた冬也は、しかし、含みがありそうなアキラの態度に了解してベッドを離れた。遥斗と宙を先に外に出し、冬也に続いて部屋を後にしたアキラが後ろ手にドアを閉めると、不満そうに遥斗が呟く。
「優樹先パイ、何であんなに怒ってるんだ?」
「昼飯、食いっぱぐれたからだろ。」
 こともなげに答えた宙に、アキラが笑った。

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◆「お姫様だっこで運んだの?」と突っ込んでくれた「けま」さん、有り難う(笑
詳しくは掲示板で。

◆優樹くんが怒っている理由は次回です。お腹がすいてる訳じゃないんだよ。

◆第一部・全文アップ!番外編も掲載してありなす。(なお裏番外は腐女子的内容のためパスワード制です、ごめんなさい。興味があるかたはメールで問い合わせてください。ホームページ・掲示板からメールで問い合わせできます)
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