私立叢雲学園怪奇譚・第二部〔本章〕6
2004年1月30日<コメント>
★キリの良いところで、ホームにVOL1としてまとめます。何も計画性が無くて、プロットもろくに切らないし、フローチャートもありません。ただ、今まで読んできた沢山の本が、あたしにちょっとだけ勘をくれるわけです。「この辺で展開が変わればいいかな?」みたいな。(笑)
そんな書き方はもちろんやり方として良いわけありませんが、勘を信じて書くことにしています。迷うと書けなくなるから。
★最近「ご近所さん」と、子供がらみでトラブルが。こちらからすれば向こうの言いがかりに過ぎない気もするのですが、どうも相手からすると気が済まないらしいです。
「貴方では話にならないから、ご主人に話したい。」と、ヒステリックに言われて、主人に話しました。そしたら快く引き受けてくれた。
すごく嬉しかったな。仕事で大変な思いしてるのに、近所のトラブルで煩わせたくなかった。でも、子供やあたしのこと、大切に思ってるって実感できた。そんなとき、幸せだって思う。
トラブルがあると、身近な幸せがよくわかる。友人の有り難さもよくわかる。
その点で、良い経験としてプラスに考えるあたしって、おめでたいかもね?
★もちろん暗い部分もありますが、それは「猿日記」で書いてます。内緒です(苦笑)
:::::::::::::::::::::
<本文>
近づくヘッドライトに気が付いたのであろう、待ちかねていたらしい初老の男性が、車が止まるより早く玄関から小走りに出てきた。
「霧で迷ったかと、心配していたぞ。」
「ただいま、父さん。一年ぶりだから、そう思われても仕方ないけど、まさか自分の家を忘れたりしないさ。お客さんを連れてきたよ。」
「父さん」と呼ばれた男性は、にこやかに笑って手を差し出す。薄いラベンダー色のダンガリーシャツにジーパン姿。長めの白髪は綺麗に後ろに流してまとめ、形よく整えられた口髭をたくわえて、いかにも山荘の主人といった風体だ。山歩きと猟で鍛えていると緒永から聞いてはいたが、年齢よりも若々しい精悍な体躯が見て取れる。
「ようこそ『美月荘』へ。私は冬也の父親で緒永満彦と申します、どうぞよろしく。」
差し出された手を、アキラが代表して握った。
「こちらこそ、お世話になります。大勢で押し掛けてしまって申し訳ありません。それにしても本当に良いんですか? 緒永さんの計らいで料金を随分割り引いてもらったんですが……。」
「良いんですよ、入っていた予約が直前でキャンセルになりましてね。私どもとしてはかえって助かりました。さあ、早く中にお入り下さい、陽が落ちて寒くなってきました。温かい飲み物を用意いたしましょう。」
遼に起こされて、ワゴン車の連中もぞろぞろと車から降りる。
「あっ、すげぇ! 天体観測用のドームがあるぜっ!」
突然その中の一人、忠見遙斗が屋根を見上げて叫ぶと満彦が笑顔になった。
「自慢の反射望遠鏡がありましてね、幸い霧も晴れたから今夜は綺麗な星空を観測できますよ。よかったら、すぐにご案内しますが。」
「えっ、いいんですか?」
はやる遙斗と宙の頭に、バイクから降りた優樹が手を置いた。
「なあ、遙斗。俺はどっちかってぇと……。」
途端に二人は身を固くする。
「おまえ達、どうやら天体観測は夕食後の方がよさそうだぜ。」
その様子を見ていた佐野の言葉に皆が笑った。その中で、ふと、視線を感じて遼が山荘を見上げると、二階の窓から誰かがこちらを見ている。
「どうかしたのか?」
優樹が気付いて声をかけた。
「二階に女の人が……。」
表情を変え、優樹も二階を見上げる。が、そこには誰もいない。問いかける優樹の視線に遼は首を傾げた。
遼には普通の人間には見えないものが見える。優樹を始め、何人かの友人達はそのことを知っていた。幽霊、とは言いはばかられるが、近いものだ。過去にその場所で死んだ、生き物の残像。焼き付いた意識、想い、そして恐怖。幼いときから目の前の幻像に苦しみ続け、殺人現場が見えてしまった事から事件にまで巻き込まれてしまった。しかし友人の力を借りて解決し、自分を取り戻すことができたのだった。優樹、そして友人達。今の遼には、何が見えようとも恐れるものなど何もない。
「夕食の支度が出来てますから、部屋は後でご案内します。去年の狩猟期にでかいイノシシを仕留めましてね、いつもはうちのシェフがフランス料理をご用意するのですが、今日は私が腕を振るいました。」
満彦に招き入れられ山荘の食堂にはいると、四人掛けのテーブルが五つあり、そのうちの三つに食事の用意がしてあった。テーブル中央の卓上コンロには湯気の立つ土鍋がかかり、食欲を誘う良い匂いをさせている。
「ボタン鍋はみそ仕立てで、煮込んだ方が上手い。早速いただこうじゃないか。須刈君、佐野君、轟木君、ビールは?」
「もちろんいただきます。」
冬也が聞くと、間髪を入れずに答えた佐野が苦笑するアキラに目配せした。
「この際、固いこと言うなよ?」
「言わないけどさぁ、まっ、いいか。」
正確には今年大学に入ったばかりの三人は、まだ未成年である。
「それなら俺も……。」
「君はダメだ、後輩の前だよ。」
あわよくば、と、思ったらしく、仲間に加わろうとした優樹を遼がいさめた。田村に付き合い時々飲んでいるのを知っていたからだ。
「ちぇっ、おまえ頭固すぎ。」
「固くて結構。」
「イノシシ食えないくせに。」
「関係ないだろ、そんなこと。」
遼は顔を赤らめた。
「ああ、そうだった。父さん、彼はイノシシがダメなようだから、他の物を用意できないかな?」
やりとりを聞いていた冬也が、ビールを持って厨房から出てきた満彦に向かって声をかけた。
:::::::::::::::::::::
◆一部に比べて仲良しぶりを見せる優樹君と遼君。書いてて楽しいです。でも遼君は、また別の視点で悩んでます。それは優樹君の過去に関わりますが…。
◆終了章・全文アップ!番外編も掲載してありなす。(なお裏番外は腐女子的内容のためパスワード制です、ごめんなさい。興味があるかたはメールで問い合わせてください。ホームページ・掲示板からメールで問い合わせできます)
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★キリの良いところで、ホームにVOL1としてまとめます。何も計画性が無くて、プロットもろくに切らないし、フローチャートもありません。ただ、今まで読んできた沢山の本が、あたしにちょっとだけ勘をくれるわけです。「この辺で展開が変わればいいかな?」みたいな。(笑)
そんな書き方はもちろんやり方として良いわけありませんが、勘を信じて書くことにしています。迷うと書けなくなるから。
★最近「ご近所さん」と、子供がらみでトラブルが。こちらからすれば向こうの言いがかりに過ぎない気もするのですが、どうも相手からすると気が済まないらしいです。
「貴方では話にならないから、ご主人に話したい。」と、ヒステリックに言われて、主人に話しました。そしたら快く引き受けてくれた。
すごく嬉しかったな。仕事で大変な思いしてるのに、近所のトラブルで煩わせたくなかった。でも、子供やあたしのこと、大切に思ってるって実感できた。そんなとき、幸せだって思う。
トラブルがあると、身近な幸せがよくわかる。友人の有り難さもよくわかる。
その点で、良い経験としてプラスに考えるあたしって、おめでたいかもね?
★もちろん暗い部分もありますが、それは「猿日記」で書いてます。内緒です(苦笑)
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<本文>
近づくヘッドライトに気が付いたのであろう、待ちかねていたらしい初老の男性が、車が止まるより早く玄関から小走りに出てきた。
「霧で迷ったかと、心配していたぞ。」
「ただいま、父さん。一年ぶりだから、そう思われても仕方ないけど、まさか自分の家を忘れたりしないさ。お客さんを連れてきたよ。」
「父さん」と呼ばれた男性は、にこやかに笑って手を差し出す。薄いラベンダー色のダンガリーシャツにジーパン姿。長めの白髪は綺麗に後ろに流してまとめ、形よく整えられた口髭をたくわえて、いかにも山荘の主人といった風体だ。山歩きと猟で鍛えていると緒永から聞いてはいたが、年齢よりも若々しい精悍な体躯が見て取れる。
「ようこそ『美月荘』へ。私は冬也の父親で緒永満彦と申します、どうぞよろしく。」
差し出された手を、アキラが代表して握った。
「こちらこそ、お世話になります。大勢で押し掛けてしまって申し訳ありません。それにしても本当に良いんですか? 緒永さんの計らいで料金を随分割り引いてもらったんですが……。」
「良いんですよ、入っていた予約が直前でキャンセルになりましてね。私どもとしてはかえって助かりました。さあ、早く中にお入り下さい、陽が落ちて寒くなってきました。温かい飲み物を用意いたしましょう。」
遼に起こされて、ワゴン車の連中もぞろぞろと車から降りる。
「あっ、すげぇ! 天体観測用のドームがあるぜっ!」
突然その中の一人、忠見遙斗が屋根を見上げて叫ぶと満彦が笑顔になった。
「自慢の反射望遠鏡がありましてね、幸い霧も晴れたから今夜は綺麗な星空を観測できますよ。よかったら、すぐにご案内しますが。」
「えっ、いいんですか?」
はやる遙斗と宙の頭に、バイクから降りた優樹が手を置いた。
「なあ、遙斗。俺はどっちかってぇと……。」
途端に二人は身を固くする。
「おまえ達、どうやら天体観測は夕食後の方がよさそうだぜ。」
その様子を見ていた佐野の言葉に皆が笑った。その中で、ふと、視線を感じて遼が山荘を見上げると、二階の窓から誰かがこちらを見ている。
「どうかしたのか?」
優樹が気付いて声をかけた。
「二階に女の人が……。」
表情を変え、優樹も二階を見上げる。が、そこには誰もいない。問いかける優樹の視線に遼は首を傾げた。
遼には普通の人間には見えないものが見える。優樹を始め、何人かの友人達はそのことを知っていた。幽霊、とは言いはばかられるが、近いものだ。過去にその場所で死んだ、生き物の残像。焼き付いた意識、想い、そして恐怖。幼いときから目の前の幻像に苦しみ続け、殺人現場が見えてしまった事から事件にまで巻き込まれてしまった。しかし友人の力を借りて解決し、自分を取り戻すことができたのだった。優樹、そして友人達。今の遼には、何が見えようとも恐れるものなど何もない。
「夕食の支度が出来てますから、部屋は後でご案内します。去年の狩猟期にでかいイノシシを仕留めましてね、いつもはうちのシェフがフランス料理をご用意するのですが、今日は私が腕を振るいました。」
満彦に招き入れられ山荘の食堂にはいると、四人掛けのテーブルが五つあり、そのうちの三つに食事の用意がしてあった。テーブル中央の卓上コンロには湯気の立つ土鍋がかかり、食欲を誘う良い匂いをさせている。
「ボタン鍋はみそ仕立てで、煮込んだ方が上手い。早速いただこうじゃないか。須刈君、佐野君、轟木君、ビールは?」
「もちろんいただきます。」
冬也が聞くと、間髪を入れずに答えた佐野が苦笑するアキラに目配せした。
「この際、固いこと言うなよ?」
「言わないけどさぁ、まっ、いいか。」
正確には今年大学に入ったばかりの三人は、まだ未成年である。
「それなら俺も……。」
「君はダメだ、後輩の前だよ。」
あわよくば、と、思ったらしく、仲間に加わろうとした優樹を遼がいさめた。田村に付き合い時々飲んでいるのを知っていたからだ。
「ちぇっ、おまえ頭固すぎ。」
「固くて結構。」
「イノシシ食えないくせに。」
「関係ないだろ、そんなこと。」
遼は顔を赤らめた。
「ああ、そうだった。父さん、彼はイノシシがダメなようだから、他の物を用意できないかな?」
やりとりを聞いていた冬也が、ビールを持って厨房から出てきた満彦に向かって声をかけた。
:::::::::::::::::::::
◆一部に比べて仲良しぶりを見せる優樹君と遼君。書いてて楽しいです。でも遼君は、また別の視点で悩んでます。それは優樹君の過去に関わりますが…。
◆終了章・全文アップ!番外編も掲載してありなす。(なお裏番外は腐女子的内容のためパスワード制です、ごめんなさい。興味があるかたはメールで問い合わせてください。ホームページ・掲示板からメールで問い合わせできます)
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