<コメント>
暮れも押し迫ってきましたね。チビ達が冬休みにはいると日中書いてる時間が無くなります。でも新年から2部が始まるのでプロット切りに励もうかな。
 アキラ君も手持ちの資料だけでここまで来たから色々不備があるかと思いますが、気が付いたことなどご指摘いただけると嬉しいです。本当はもう少し色気のあるお話にしたかったのに、駄目でした(泣)
 色気は2部に持ち越しです。(誰?)

:::::::::::::::::::::
<本文>

「……。」
 同情したのか、シンシアがジェフの肩に手を置く。アキラもかける言葉が見付からなかった。
「まあ、そんなこたぁ、どうでもいい。キリアンを預かることになったのは何かの縁だ。退役してからろくな仕事もしていなかったが、この際キューバにいる叔父のコーヒー園でも手伝って、こいつの面倒でもみるさ。」
 それまで顔を伏せていたキリアンが、うっすらと涙が滲ませて上目使いにジェフを見た。その好意を喜んでいるのだろうと思ったアキラは、次の瞬間、まるで全ての希望を否定するかのような絶望の色をその瞳の中に見てしまった。
 キリアンが恐れているのは追っ手だけではない、と、不安な思いを抱きながら青白い整った横顔を見つめる。『実験体』と言ったその意味を今まで考えてはみなかったが、何か恐ろしい秘密が隠されているのかも知れない。そうでなければあの物々しい追っ手の説明がつかないのではないか? しかし、あまりにかよわく頼りなげなこの少女が、いったいどれだけの秘密を持つというのだろう?
「うん、もう昼時を過ぎてるな。近くの町で休憩と昼飯だ。スタンドにも寄って、後はノンストップで行くぞ。」
 アキラの思考はジェフの言葉に遮られた。

 メリーランド州に入り、ボルティモア郊外のガソリンスタンドを併せ持つハンバーガーショップにジェフは車を止めた。目的地までは、ほぼ半分来たことになる。
「マクドナルドでなくて、悪いな。」
 まるで、からかうのを楽しんでいるような言葉にも慣れて、アキラはそれを無視した。
「あたいはガソリン入れてくるから先に行ってくれる? オーダーはチリとダイエットペプシをお願いね。」
 助手席を降りたシンシアが、運転席に座り直してエンジンをかけると、ジェフが慌てて開いている窓に顔を入れた。
「給油なら俺が……。」
「スタンドのコンビニで買いたい物があるんだ。男には用のない物だよ?」
 渋々首を引っ込めた不満顔にウインクをして、シンシアは車を回した。
 日本では馴染みのないチェーン店ではあったが、並んだメニューに大差はなかった。アキラはコーヒーとシンプルなハンバーガーを頼み、キリアンを見るとチキンサラダにオレンジジュースを頼んだようだ。
「いかんなぁ、それじゃ体力がつかないぞ。」
 トレーを持ってアキラの横に座り、余計な世話を焼くジェフに微笑みを返す。そのジェフはと言えば、うんざりするような大きさのハンバーガーにフライドチキン、ポテト、Lサイズのコーラを前にして、飢えた熊のようにがっついていた。
 何をするにも大雑把なその様子に少し気が緩み、つい笑みを漏らしたアキラは、いまだ浮かない顔のキリアンに気付いて眉を曇らせた。
「まだ、あの連中が追いかけてくると思うのかい? きっと彼らはニューヨークで君を捜しているだろうから、ここまで来れば安心なんじゃないかな。」
「私が心配しているのは、シンシアさんのことです。」
 俯く口から小さな声。
「大丈夫だって。あいつらが現れなければ彼女に迷惑が掛かることはないし、このまま無事にシャーロッツビルまで行けると思うけどな。」
「あの人は、シンシアさんではありません。」
 えっ、と、アキラは飲みかけたコーヒーの手を止め、ジェフも口を動かすのをやめて、眉間にしわを寄せた。
「そいつは、どういうことだ?」
 コーラで食べ物を流し込み、低い声で呟くジェフを伺い見てキリアンは唇をかむ。が、目を閉じ深く息を吸うと決意の眼差しを返した。
「車もあの人の物ではありません、ハーツ社のレンタカーです。」
「何故わかる?」
「私はそれが読めるからです。」
 何を言っているんだ、と、当惑するジェフを差し置き、アキラはキリアンに向き直った。
「読めるって、どういうこと? 君は、自分を実験体だと言ったけど、何か特別な人間なんじゃないのか? ちゃんと訳を話してくれないかな。」
 小刻みに震える手を、アキラはそっと握った。
「心配ないから。」
 キリアンの目から涙が伝い落ちた。
「彼らは私を《リーダー》と呼んでいます。私は手にした物からその全ての情報を読みとる力があるからです。」
「はあ? 情報を読みとるってどういうことだ?」
 未だに状況が読めないジェフが、気の抜けた声を出した。敵意ある者と対峙する方法は心得ていても、事が微妙な場合においては頭が回らないらしい。
 キリアンは、オレンジジュースのカップを手に取った。
「これを手にしただけで、オレンジの産地、砂糖の含有量、添加物の組成、残留農薬の濃度、製造過程、全てを読みとることが出来るのです。カップに印刷されているインクの化学式でさえ。」
「んな、馬鹿な!」
 そう言ったきり言葉を失ったジェフと同様、アキラもにわかに信じられない。

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◆キリアン君の秘密が明らかに。「まさか」衝撃の真実。どこかのTV番組じゃないですが(笑)
★まだまだ波乱は続きますが…。
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