<コメント>
祝!3000ヒット!!少なくとも自分以外に小説を読んでくれる人がいることが何よりの励みです。ありがとうございます。
しかし、アキラ君編はますます本編からかけ離れてますね(笑)もう少し資料を集めてマニアックな話にしたいのですが、番外だからそれもどうかなーとも思うし。独立したお話としていつか書き直す機会があれば、ちゃんとしたいですね。(あるのか?)
ああ、クリスマスネタが止まらない。フルキャラで「ゆりあらす」にてのパーティシーンを書きたくてたまらないのですが。ううむ、今週中に書き上げて、来週中にアップし終えたら「555」と「優樹X遼」のクリスマスが書けるかな?がんばってみます(爆笑)

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<本編>

 かび臭い、湿った空気。暗い裸電球一つに照らし出された部屋は、天井や壁に無数の鉄パイプが走り、ひび割れたコンクリートがむき出しの床には埃をかぶった旧い型のテレビや冷蔵庫、壊れた食器棚や破れたソファーの類が雑然と積み重ねられていた。
「奴等も流石にここまでは追ってこれまい。あの場にいた連中は俺のアパートなんざ知らねぇし、カウンターの爺さんは口が堅いから心配いらねぇ。安心しろとは言えないが、服を乾かして何か腹に入れるくらいの時間はあるはずだ。」
 ジェフはそう言うと、キリアンを担いだままがらくたの中からソファーを足で蹴って引きずり出し、下水道に通じる扉の上に運ぶ。アキラも僅かに残った力を出し切りそれを手伝った。スクラップになった冷蔵庫の後ろに回ると鉄パイプの隙間にドアがあり、扉の向こうになおも階段が続いていた。ジェフの後から段を上りながら、アキラは必死で頭を整理しようとしていた。自分の置かれた状況が、理解できない。いったい何から逃げ回っているのだろう? 何故逃げているのだろう? この男は何者なんだろう? 安全なのか? 信用できるのか? これからどうすればいいのだろうか?
「ぼうっとしてんじゃねぇぞ、大丈夫か? ジャパーニーズ……。」
「アキラだ。」
「OK、大丈夫そうだな、アキラ。」
 ジェフが笑った。その笑顔に、悪い人間ではなさそうだと、少し気が緩む。
 乗り込んだエレベーターを五階で降りて、ぼろぼろのカーペットに躓きそうになりながら突き当たりまで行き、一番奥、右手の部屋の鍵をジェフが開けた。
「男やもめの部屋にしちゃあ、綺麗なもんだぜ。」
 綺麗、と言うよりは、何もない殺風景な部屋をアキラは見渡した。リビングにあるのはソファとテレビ。テーブル代わりらしい木箱、そして寝袋。
「さっさとその服を脱いでこれでも着ていろ。管理人の婆さんが乾燥機を持ってるから服を乾かしてもらってくる。業突張りのイタリア人でなぁ、いくらか取られると思うがおまえ金を持ってるか?」
 奥の部屋に消えたジェフが、ネル地のシャツを二枚手に持ち戻ってきた。
 迂闊に財布を出しても良い物かと、ちらりと頭の隅をよぎったが、既に思考さえも曖昧になりかけていた。どうにでもなれ、と、バッグのサイドポケットから出した財布を渡すと、ジェフはその中から二十ドル紙幣を取り投げて返す。
「何か食い物もいるだろう。安心しな、ガキからチップはとらねえから。」
 傷のある頬をゆがませ笑ったところを見ると、どうやらジョークのつもりらしい。懸念が去ったわけではないが、言われたとおりアキラは濡れた服を脱ぐと、渡されたシャツに着替えた。冷え切った身体に乾いたネル地は心地よく、体温が戻っていくのを感じて、ほっ、と、息をつく。大きすぎるシャツは袖口を半分も折らなければ手を出すことが出来ず、裾は膝がかくれるほどもあった。
「どうやらこっちは自分で脱ぐ力も残ってないようだ。手伝ってくれ、着替えさせてベッドに運ぼう。」
 見ると、ソファーにぐったり身体を預けたキリアンは、指一本動かす力も無いように思えた。ジェフがその背を支え、アキラがパーカーを脱がそうとしたとき、うっすらと目を開けて弱々しくその手を払う。
「やめ…て、自分で出来る。バス…ルームを貸してくださ…い。」
「なんだ、よほどお育ちがいいんだな。人前じゃあ脱げないとでも……。」
 不愉快そうな顔をしたジェフの表情が、次の瞬間、困惑のそれに変わった。
「おまえ、まさか。いや、そうだったのか。」
 ちっ、と低く舌打ちして憮然となったジェフは、再びキリアンをソファに横たえ「待ってろ」と言うと、呆然とするアキラに構わず部屋を出ていった。

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★「りんせっと」様リクエストの幼稚園編、クリスマス編の冒頭部分として書いてみました。アップ遅れてごめんなさい。アキラ君が終わらないんですよー(T_T)
◆おかげさまで3000ヒット、ありがとうございました。踏んで下さった方、掲示板に一言下さると嬉しいです。
<叢雲ご意見掲示板>
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