<コメント>
 先日、十何年ぶりに「同人誌即売会」に行って来ました。友人のスペースにおじゃましての参加ですが、とても楽しかった。
 思えば、初めてその手のイベントに参加したのはSF大会が最初で、デビューしたての夢枕漠さんや神林長平さんを間近に見て嬉しかったなぁ。私の原点と申しますか、未だにこうやって書いているわけです(笑)
 さて、謎の少年キリアン君。彼にはまだまだ秘密があります。明らかになるに従い、アキラ君も後戻りできない深みに。「叢雲」より可愛いと、言ってくれる人もいますが…?

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<本文>

「ところで、てめぇは? どうやら追われてんのはこっちの方らしいが。」
 二人にカウンターの紳士が用意してくれたコーヒーを手渡しながら、男が顎でキリアンを指す。
「ポート・オーソリティでパーカーを譲ってくれと言われて、理由を聞いたらあいつらに追われて困っているようだったからつい……。」
 つい一緒に逃げることになってしまったのだが、思いも寄らない成り行きに戸惑いを隠せない。これからどうすればいいのだろうか?目の前の大男は助けてくれる気があるのだろうか?
「ジェフ、おまえさんが借金取りから逃げるルートで逃がしてやったらどうだ?」
 カウンターの一番奥の席に座って、ビールのジョッキをあおっていた赤ら顔の男が笑いながら叫んだ。縮れた赤毛と、同じくらい縮れた口髭。逞しい二の腕にはドクロの眼窩をはい回る赤い舌を出した蛇の入れ墨。その容貌にどきりとして、アキラは改めて二人を匿ってくれた男を見上げる。
 ジェフと呼ばれたその男は、短く刈り込んだ黒髪で彫りの深い浅黒い顔をしていた。いかつい目つきをしているが、どことなく愛嬌のある小さな目。大きな傷跡の残る頬とそのために少し引きつった口元が笑っているようにも見える。
「ちっ、てめぇこそ、いつも女からこそこそ逃げ回るのに使ってるだろうがっ! ……まあ、いい。カウンターの後ろに下水道に通じている入り口がある。案内してやっからついてきな。」
「助けて、くれるんですか?」
 躊躇いがちに聞いたアキラに、ジェフは引きつった口元をなお引きつらせた。
「つまんねぇ事、聞くんじゃねぇよ。ガキをやばい連中におめおめ渡したとあっちゃ、お袋にどやされらぁ。おっと、その前にかわいこちゃんの服を乾かした方がいいか。おまえも濡れたままじゃあ、その細っこい身体だ、冷えて肺炎おこしちまう。夏の雨は用心しないとな、チャイニーズ・ボーイ。」
 俺は日本人だしボーイじゃない、と、言い返そうとしたその時。
「ヘイ、ジェフリー。急いだ方がいいぜ、まずい事になりそうだ。地下道を行くならどうせびしょ濡れになるんだ、一刻も早くここを出ろ。」
 見張り番のように覗き窓から外を伺っていた男が叫んだ。ジェフはその意味を咄嗟に察してアキラとキリアンを両腕に抱えるとカウンターの中に放り込み、自らも身を翻した。
 瞬間、鼓膜が破れるような、激しい爆発音が狭い空間を引き裂いた。木製の頑丈そうな扉は、破れたペーパークラフトのようにぼろぼろに散らばり、衝撃で砕けたグラスの破片が宙を舞う。
「催涙弾だ!」
 誰かが大声で怒鳴った。
 投げ込まれた黒い筒状の物から、音を立てて白い煙が吹き出し、刹那、黒い戦闘服らしき物に身を固めた男が三人、自動小銃を手に乗り込んできた。その後ろにアキラ達を追っていた黒いコートの男が立つ。
 白い煙に自由を奪われ床に蹲り涙を流す男達を次々に拘束して、戦闘服の男の一人がコートの男に報告に戻った。
『カザック少佐、標的はいません。』
 バスターミナルで銃を取り出そうとした部下を制した黒いコートの男、ユージーン・カザック少佐は失態に苦々しい笑みを浮かべ低いドイツ語で命令を下した。
『探せ。もし我々以外の手に落ちるようならば殺してもかまわん。』

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◆ドイツ語を話す軍人が出てきました。もろに趣味の問題ですね(爆笑)ゲーリー・シニーズみたいな渋いタイプが好みですが、読み手のみなさまは金髪碧眼のハンサムな軍人を想像してくださって構わないですよー。
★好みのタイプの軍人は?
<叢雲ご意見掲示板>
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