私立叢雲学園怪奇譚・番外(須刈アキラ 編)9
2003年11月27日<コメント>
火曜日、木曜日更新を守らなくちゃねっ。こんなお話でも読んでくれる人がいるようだし。出来たら一言下さいね。何だか最近孤独な気分。晩秋のせいですかね?(爆笑)
何だかんだと2600カウントすぎて、アキラ君編はまだ続きます。今回から海兵隊のおじさん登場。ますます楽しい展開に(自分的には)なります。趣味に走ったお話ですが、笑って許してやってください。いっそ宇宙人に誘拐された話でも良かったかも。それで未知の惑星で革命に巻き込まれて姫君を助けてモビルスーツに乗って……。(いい加減にしなさい・突っ込み)
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<本文>
小さな覗き窓が開き、いぶかしそうに目を細めた男が顔を出した。視線の先が少し下を向き、意外な訪問客に眉をひそめる。「場違いだ、帰れ。」といわんばかりに覗き窓を閉じる前に、アキラが叫んだ。
「キッド・ナップ(児童誘拐犯)だ! 捕まったら売り飛ばされる!」
男の目が見開かれ、パーカーの少年とアキラを交互に見た。咄嗟に思いついた助けを求める理由は、無理があったか? 無念の息を飲んだその時、扉が少し開いた。
「奥に入れ!」
低いだみ声に安堵する間もなく、 毛深い太い腕が二人を中に引きずり込み扉を再び固く閉じる。
暗い照明と、つんと鼻につく、きついタバコの匂い。まとわりつく、アルコールと体臭が混じり合った空気。手狭なバーといった様子のこの場所に、アキラは一瞬、路地裏にある汚物のような嫌悪感を覚えた。しかし、ここが安全を確保してくれるようならば贅沢を言える場合ではないのだ。中で物憂げにグラスを傾けているのは5人ほどで、皆体格のいい一癖ありそうな強面をしている。ただ、カウンターの中にいる人物だけは、かなり年輩の品の良い紳士だった。
アキラが腕を引いた男に促されるまま奥のボックス席に身を隠すと、間髪を入れず扉を激しく叩く音が響き、その男は覗き窓の扉をとぼけた顔で持ち上げた。
「その子達を渡してもらおう。」
「いやだね。」
居丈高な物言いに、冷静な声で答える。
「武力行使も示さんぞ。」
はっはっは、と、男が笑った。
「やってみな、ここは海兵隊崩れのたまり場だ。みんな腕にはそれなりに自信があるし、武器もある。おまえさん達がまっとうな連中でないなら死んじまっても誰も文句は言わないだろうしなぁ。」
男と話していた追っ手の一人は、振り向いて何事かを外国の言葉で後ろに伝えているようだ。しばらくして、
「わかった、引き上げよう。」と、扉の向こうから声がして、覗き窓を閉めようとした男は相手の口元が薄く笑っていたのを確かに認めた。厭な、感じだ。
「あの……。」
奥のボックス席から、アキラが入り口に向かって声をかけた。
「ああっ?」
面倒そうに振り向いた男に、どう礼を言うべきか? まだここが安全とは限らないのだ。
「あの、ありがとうございました。あいつらがいなくなったら直ぐに出ていきます。」
「そりゃあ、無理だ。」
えっ、と、戸惑うアキラに、カウンターの老紳士が笑いながらタオルを投げた。
「ふん、キッド・ナップねぇ……。」
入口から離れた男は、カウンターに置いてあったグラスを手にアキラと少年を値踏みするかのように上から下まで睨め回す。
びしょ濡れのパーカーを脱ぎタオルで髪を拭いている方は、プラチナブロンド、グリーン・アイで、そばかす混じりだが白い肌。整った赤い唇。いかにも高く売れそうな容姿だ。ではもう一人の少年は? アジア系にしては色白で、すっと通った鼻筋に薄い唇。意志の強そうな黒い瞳に、妖しい東洋の魅力を思わせる切れ長のまなじり。細い首と細い肩。
にやにやと自分を見る男の視線に、アキラは次第に気分が悪くなってきた。確かに思い付きで言いはしたが、俺はもうすぐ十八だ。十三・四のガキじゃないぞ。
睨み付けるように見ると、男はいきなり真面目な顔になった。
「おまえら、何者だ? あの連中は誘拐犯なんかじゃねぇ。きちんとした組織で訓練されている、まあ、多分軍人だぜ。爺さんが言うとおり、出てくるまでは核ミサイルが落ちてこようと動きゃしねえよ。」
「軍人?」
意外な言葉にぽかんと口を開いたまま、アキラは少年を見る。そんな、馬鹿な。何で俺が軍人に追われる少年とこんな場所に?
「キリアン、その、なぜ君は逃げなくちゃいけないんだい?」
狼狽え気味に尋ねると、キリアンは少し息を吸い大きく吐き出した。震えは止まっていたが、青ざめた顔のままだ。
「彼らに言わせると、僕はすごく頭が良いのだそうです。だから多方面での利用価値が高いのだとか。」
「天才少年、ってやつか。」
ボックス席のソファーに身を沈め、アキラは溜息をついた。
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◆アキラ君、その趣味の人には結構高値で売れるのかしら?(爆笑)買うという人、買わない人。
<叢雲ご意見掲示板>
http://www.ad-office.ne.jp/cgi-bin/bbs/ad1.cgi?8429maki
火曜日、木曜日更新を守らなくちゃねっ。こんなお話でも読んでくれる人がいるようだし。出来たら一言下さいね。何だか最近孤独な気分。晩秋のせいですかね?(爆笑)
何だかんだと2600カウントすぎて、アキラ君編はまだ続きます。今回から海兵隊のおじさん登場。ますます楽しい展開に(自分的には)なります。趣味に走ったお話ですが、笑って許してやってください。いっそ宇宙人に誘拐された話でも良かったかも。それで未知の惑星で革命に巻き込まれて姫君を助けてモビルスーツに乗って……。(いい加減にしなさい・突っ込み)
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<本文>
小さな覗き窓が開き、いぶかしそうに目を細めた男が顔を出した。視線の先が少し下を向き、意外な訪問客に眉をひそめる。「場違いだ、帰れ。」といわんばかりに覗き窓を閉じる前に、アキラが叫んだ。
「キッド・ナップ(児童誘拐犯)だ! 捕まったら売り飛ばされる!」
男の目が見開かれ、パーカーの少年とアキラを交互に見た。咄嗟に思いついた助けを求める理由は、無理があったか? 無念の息を飲んだその時、扉が少し開いた。
「奥に入れ!」
低いだみ声に安堵する間もなく、 毛深い太い腕が二人を中に引きずり込み扉を再び固く閉じる。
暗い照明と、つんと鼻につく、きついタバコの匂い。まとわりつく、アルコールと体臭が混じり合った空気。手狭なバーといった様子のこの場所に、アキラは一瞬、路地裏にある汚物のような嫌悪感を覚えた。しかし、ここが安全を確保してくれるようならば贅沢を言える場合ではないのだ。中で物憂げにグラスを傾けているのは5人ほどで、皆体格のいい一癖ありそうな強面をしている。ただ、カウンターの中にいる人物だけは、かなり年輩の品の良い紳士だった。
アキラが腕を引いた男に促されるまま奥のボックス席に身を隠すと、間髪を入れず扉を激しく叩く音が響き、その男は覗き窓の扉をとぼけた顔で持ち上げた。
「その子達を渡してもらおう。」
「いやだね。」
居丈高な物言いに、冷静な声で答える。
「武力行使も示さんぞ。」
はっはっは、と、男が笑った。
「やってみな、ここは海兵隊崩れのたまり場だ。みんな腕にはそれなりに自信があるし、武器もある。おまえさん達がまっとうな連中でないなら死んじまっても誰も文句は言わないだろうしなぁ。」
男と話していた追っ手の一人は、振り向いて何事かを外国の言葉で後ろに伝えているようだ。しばらくして、
「わかった、引き上げよう。」と、扉の向こうから声がして、覗き窓を閉めようとした男は相手の口元が薄く笑っていたのを確かに認めた。厭な、感じだ。
「あの……。」
奥のボックス席から、アキラが入り口に向かって声をかけた。
「ああっ?」
面倒そうに振り向いた男に、どう礼を言うべきか? まだここが安全とは限らないのだ。
「あの、ありがとうございました。あいつらがいなくなったら直ぐに出ていきます。」
「そりゃあ、無理だ。」
えっ、と、戸惑うアキラに、カウンターの老紳士が笑いながらタオルを投げた。
「ふん、キッド・ナップねぇ……。」
入口から離れた男は、カウンターに置いてあったグラスを手にアキラと少年を値踏みするかのように上から下まで睨め回す。
びしょ濡れのパーカーを脱ぎタオルで髪を拭いている方は、プラチナブロンド、グリーン・アイで、そばかす混じりだが白い肌。整った赤い唇。いかにも高く売れそうな容姿だ。ではもう一人の少年は? アジア系にしては色白で、すっと通った鼻筋に薄い唇。意志の強そうな黒い瞳に、妖しい東洋の魅力を思わせる切れ長のまなじり。細い首と細い肩。
にやにやと自分を見る男の視線に、アキラは次第に気分が悪くなってきた。確かに思い付きで言いはしたが、俺はもうすぐ十八だ。十三・四のガキじゃないぞ。
睨み付けるように見ると、男はいきなり真面目な顔になった。
「おまえら、何者だ? あの連中は誘拐犯なんかじゃねぇ。きちんとした組織で訓練されている、まあ、多分軍人だぜ。爺さんが言うとおり、出てくるまでは核ミサイルが落ちてこようと動きゃしねえよ。」
「軍人?」
意外な言葉にぽかんと口を開いたまま、アキラは少年を見る。そんな、馬鹿な。何で俺が軍人に追われる少年とこんな場所に?
「キリアン、その、なぜ君は逃げなくちゃいけないんだい?」
狼狽え気味に尋ねると、キリアンは少し息を吸い大きく吐き出した。震えは止まっていたが、青ざめた顔のままだ。
「彼らに言わせると、僕はすごく頭が良いのだそうです。だから多方面での利用価値が高いのだとか。」
「天才少年、ってやつか。」
ボックス席のソファーに身を沈め、アキラは溜息をついた。
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◆アキラ君、その趣味の人には結構高値で売れるのかしら?(爆笑)買うという人、買わない人。
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