私立むらくも学園怪奇譚・番外(神崎刑事 編)6
2003年10月22日<コメント>
今日は雨です。春は一雨事に暖かくなり、秋は一雨事に寒くなると言います。
夜、手が伸びるのがビールからウィスキーに変わり、これも自分の中での季節なのだなと思うこのごろ。(ただの酒飲みじゃん)
チェストの中にはブランディ、ウイスキー、カリビアンラム。中でも一番好きなのはシングルモルトウィスキーで、スモーキーなもの。ショットグラスを傾けながらPCの前でキーボードを打つなんて、いやん、小説家みたい\(^O^)/(ミーハー女め(^_^;))
酒瓶の間にはホースオルフェノク(当然疾走態!)もう、彼ってお酒が似合うんだからっ(苦笑)
今夜も彼の美しい姿を眺めながらグラスを傾けるのさっ。(ええ、変人ですよ、自分は。爆笑)
:::::::::::::::::::::
<本文>
普段は県警本部の待機寮で一人暮らしをしている神崎も、非番の日にはなるべく実家に顔を出すようにしていた。
実家は千葉市からかなり遠い成田市にあるのだが、彼の二人の兄のうち長兄は仕事を理由に、次兄は家庭サービスを理由にあまり年老いた両親のもとを訪ねては来ない。末っ子の彼は、かわいがられて育ったためか、どうも実家から離れられないところがあった。
珍しく週末が非番と重なり、金曜日の夜遅くに彼が実家に帰ると思いがけなく長兄、瑛一の車が車庫にある。
「ただいま。兄さん来てるの?」
奥から彼の母親が嬉しそうな顔をしながら玄関まで迎えに出てきた。
「そうなの、珍しいでしょう? あなた夕飯は食べてくると言ってたけど、居間であの人にお酒を付き合ってあげたら? お父さん、先に寝てしまってねぇ、瑛一も話し相手が欲しいでしょうし。」
神崎は、兄が話し相手をほしがってはいないことを知っていたが、取り敢えず相づちをうつ。父も長兄と話すのが面倒で寝てしまったに違いないのだ。
居間では瑛一がテレビの報道番組を見ながらノートパソコンで仕事をしていた。テーブルには彼の好きな日本酒とつまみが用意してある。何時訪ねてくるとも知れない息子のために用意を欠かさない母心であろう。
上着とネクタイは外してあったがワイシャツとスラックス姿である。真冬でも暖房を入れて下着のまま寝る彼にとっては私服など必要ないのかも知れない。
「久しぶり。珍しいな、ここに顔を出すなんて。」
ああ、と返事を返しながらも彼はモニターから目を離さない。
「明日一番の飛行機でニューヨークに行くんだ。空港の近くに実家があるのにホテルを取ることもあるまい。」
やはりそんな理由だったか、と、神崎は諦めにも似た気持ちになる。もとよりこの兄から、定石通りの答え以外を期待してはいない。
「食事会の日程は週明けにメールするよ。そっちは大丈夫なんだろうな。」
「声をかけてもらってるけど、十人は無理かも知れない。七・八人なら何とかなるそうだよ。」
瑛一は少し困ったような顔をした。
「こっちは希望者が二十人近くいるんだ。絞るのが大変だな。まあ、礼儀として女より男が多い方がいいんだが……。」
「あ、じゃあ俺は出なくて良いんだな?」
「最初から人数に入れてない。」
神崎はほっとした反面、少し面白くもない。
「兄さん、先月も弥生さんのつてで合コンしてたじゃないか。自分の気に入った女性が見つかるまでやるつもりなのか?」
弥生は神崎の次兄、博人の妻である。もとスチュワーデスで、背の高い綺麗な女性だ。
「生憎私は女性に興味はないよ。有能な部下を自分の紹介で結婚させておくと、のちのち便利だからな。それだけだ。」
この兄は、こういう人間なのだ。何を言っても始まらない。
「大変だね、部下の面倒を見るのも。」
「そうだな。」
……嫌味も通じない。
そんな兄だが、どういう訳か時折変わった行動をとる事がある。たとえば変な言葉を教え込んだ九官鳥をいきなり実家に置いていったり、海外出張の土産に彼にだけ海外SFドラマのフィギュアや雑誌を買ってきたりするのだ。
「貴方がかわいいからよ。」と、母は言うのだが、とてもそうは思えない。確かにSFドラマはよく見るが、フィギュアを欲しいとまでは思わないし、この年で兄にかわいがられるのも真っ平だ。
(ただの嫌がらせに決まってる。)
キーボードを打ちながら杯を傾ける兄を横目に、神崎は母親が彼のために用意してくれた鰯の甘露煮をかじりながらビールのグラスを空けた。
「宏司、おまえは付き合ってる女性がいるのか?」
いきなり話を振られて、ビールがむせる。
「なっ、なんだよいきなり。人の心配より自分の心配しろよ。三十七にもなって独り身はあんたの方じゃないか。」
「言ったはずだ、女には興味がないと。結婚は博人とおまえがすればいい。早くお袋を安心させてやれ。」
「こっちの台詞だよ。」
「おまえは女に理想を持ちすぎだ。」
「あんたに言われたくない。」
瑛一は表情も変えない。反論しても無駄なのだ。言いたいことだけ言えば相手の意見など聞く耳を持たない。諦めて、彼は好物に箸をのばそうとしたが、小鉢はいつの間にか瑛一の手元にある。
「それは俺のだ。」
「お袋からもらってこい。」
ぐっ、と、言葉を飲み込んで、彼は席を立つ。が、これだけはどうしても言っておきたかった。
「俺には土産、いらないからなっ!」
兄は無言で杯を傾けた。
:::::::::::::::::::::
★神崎君のお兄さん登場です。女に興味がないのは仕事人間だからですよ、念のため。でも実はニューヨークにいい人がいるのかも知れませんね。
神崎編、昨日終わったので今日からアキラ君編書くつもりです。神崎編は後2回くらいかな?本編のプロットも固まってきました。
◆一言残してくれると嬉しいな(^O^)
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今日は雨です。春は一雨事に暖かくなり、秋は一雨事に寒くなると言います。
夜、手が伸びるのがビールからウィスキーに変わり、これも自分の中での季節なのだなと思うこのごろ。(ただの酒飲みじゃん)
チェストの中にはブランディ、ウイスキー、カリビアンラム。中でも一番好きなのはシングルモルトウィスキーで、スモーキーなもの。ショットグラスを傾けながらPCの前でキーボードを打つなんて、いやん、小説家みたい\(^O^)/(ミーハー女め(^_^;))
酒瓶の間にはホースオルフェノク(当然疾走態!)もう、彼ってお酒が似合うんだからっ(苦笑)
今夜も彼の美しい姿を眺めながらグラスを傾けるのさっ。(ええ、変人ですよ、自分は。爆笑)
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<本文>
普段は県警本部の待機寮で一人暮らしをしている神崎も、非番の日にはなるべく実家に顔を出すようにしていた。
実家は千葉市からかなり遠い成田市にあるのだが、彼の二人の兄のうち長兄は仕事を理由に、次兄は家庭サービスを理由にあまり年老いた両親のもとを訪ねては来ない。末っ子の彼は、かわいがられて育ったためか、どうも実家から離れられないところがあった。
珍しく週末が非番と重なり、金曜日の夜遅くに彼が実家に帰ると思いがけなく長兄、瑛一の車が車庫にある。
「ただいま。兄さん来てるの?」
奥から彼の母親が嬉しそうな顔をしながら玄関まで迎えに出てきた。
「そうなの、珍しいでしょう? あなた夕飯は食べてくると言ってたけど、居間であの人にお酒を付き合ってあげたら? お父さん、先に寝てしまってねぇ、瑛一も話し相手が欲しいでしょうし。」
神崎は、兄が話し相手をほしがってはいないことを知っていたが、取り敢えず相づちをうつ。父も長兄と話すのが面倒で寝てしまったに違いないのだ。
居間では瑛一がテレビの報道番組を見ながらノートパソコンで仕事をしていた。テーブルには彼の好きな日本酒とつまみが用意してある。何時訪ねてくるとも知れない息子のために用意を欠かさない母心であろう。
上着とネクタイは外してあったがワイシャツとスラックス姿である。真冬でも暖房を入れて下着のまま寝る彼にとっては私服など必要ないのかも知れない。
「久しぶり。珍しいな、ここに顔を出すなんて。」
ああ、と返事を返しながらも彼はモニターから目を離さない。
「明日一番の飛行機でニューヨークに行くんだ。空港の近くに実家があるのにホテルを取ることもあるまい。」
やはりそんな理由だったか、と、神崎は諦めにも似た気持ちになる。もとよりこの兄から、定石通りの答え以外を期待してはいない。
「食事会の日程は週明けにメールするよ。そっちは大丈夫なんだろうな。」
「声をかけてもらってるけど、十人は無理かも知れない。七・八人なら何とかなるそうだよ。」
瑛一は少し困ったような顔をした。
「こっちは希望者が二十人近くいるんだ。絞るのが大変だな。まあ、礼儀として女より男が多い方がいいんだが……。」
「あ、じゃあ俺は出なくて良いんだな?」
「最初から人数に入れてない。」
神崎はほっとした反面、少し面白くもない。
「兄さん、先月も弥生さんのつてで合コンしてたじゃないか。自分の気に入った女性が見つかるまでやるつもりなのか?」
弥生は神崎の次兄、博人の妻である。もとスチュワーデスで、背の高い綺麗な女性だ。
「生憎私は女性に興味はないよ。有能な部下を自分の紹介で結婚させておくと、のちのち便利だからな。それだけだ。」
この兄は、こういう人間なのだ。何を言っても始まらない。
「大変だね、部下の面倒を見るのも。」
「そうだな。」
……嫌味も通じない。
そんな兄だが、どういう訳か時折変わった行動をとる事がある。たとえば変な言葉を教え込んだ九官鳥をいきなり実家に置いていったり、海外出張の土産に彼にだけ海外SFドラマのフィギュアや雑誌を買ってきたりするのだ。
「貴方がかわいいからよ。」と、母は言うのだが、とてもそうは思えない。確かにSFドラマはよく見るが、フィギュアを欲しいとまでは思わないし、この年で兄にかわいがられるのも真っ平だ。
(ただの嫌がらせに決まってる。)
キーボードを打ちながら杯を傾ける兄を横目に、神崎は母親が彼のために用意してくれた鰯の甘露煮をかじりながらビールのグラスを空けた。
「宏司、おまえは付き合ってる女性がいるのか?」
いきなり話を振られて、ビールがむせる。
「なっ、なんだよいきなり。人の心配より自分の心配しろよ。三十七にもなって独り身はあんたの方じゃないか。」
「言ったはずだ、女には興味がないと。結婚は博人とおまえがすればいい。早くお袋を安心させてやれ。」
「こっちの台詞だよ。」
「おまえは女に理想を持ちすぎだ。」
「あんたに言われたくない。」
瑛一は表情も変えない。反論しても無駄なのだ。言いたいことだけ言えば相手の意見など聞く耳を持たない。諦めて、彼は好物に箸をのばそうとしたが、小鉢はいつの間にか瑛一の手元にある。
「それは俺のだ。」
「お袋からもらってこい。」
ぐっ、と、言葉を飲み込んで、彼は席を立つ。が、これだけはどうしても言っておきたかった。
「俺には土産、いらないからなっ!」
兄は無言で杯を傾けた。
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★神崎君のお兄さん登場です。女に興味がないのは仕事人間だからですよ、念のため。でも実はニューヨークにいい人がいるのかも知れませんね。
神崎編、昨日終わったので今日からアキラ君編書くつもりです。神崎編は後2回くらいかな?本編のプロットも固まってきました。
◆一言残してくれると嬉しいな(^O^)
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