<コメント>
 プライベートストーリーを書いてると、本編で書けないところが書けるけど、やはり本筋あってこそ。真面目に本編書かなくては。
 でも、神崎さんのお兄ちゃんが書けて楽しかったわ。アキラ君編に繋がる伏線もあります。「アキラ君」どうしようかな……。

:::::::::::::::::::::
<本文>

「あら、それ〔ラ・クレマンティーヌ〕の新作ですね。」
「おう、早川も知っとるのか。給湯室に行けばまだ残ってるかもしれんぞ。」
 早川望は少し首を傾ける。否定するでもなく肯定するでもない時の彼女の癖だ。
「私はあまり甘いモノは……。でもそこの焼き菓子は割と美味しいですよ。実家の近くの、私がよく行くペットショップの隣なので母に買って来るように頼まれます。」
「早川は、辛党だったな。今度また飲みにいこうじゃないか。良い店を見つけたんだがね。」
 濱田の誘いをすまし顔でかわし、早川は二人の前に書類の束を置いて去っていった。後十五分ほどで始まる捜査会議の資料だろう。彼女が声の届かないところまで行ってしまってから、神崎は濱田にに向かって低い声で言った。
「濱田さんの良い店って、あまり女性向きではないでしょう? ただの酒好きならともかく、彼女だって気の利いたところで飲む方が好きなんじゃないですか?」
「ううむ、気の利いた所ねぇ……。それはたとえば、どんなところなんだ?」
 濱田は早川を誘いたいのだろうか?
「そうですね、ホテルのラウンジとか、あとは女性好みのカクテルやつまみがあって、ムードのある音楽が低く流れているような……。」
 そこまで言うと、神崎はまた頭を抱える。
「俺にそれがわかれば苦労しないんですよ。ったく、どうしろって言うんですか!」
「な、なんだなんだ。そんなに悩むようなことを聞いたつもりはないぞ。」
 濱田が驚いて身を引くと、神崎は慌てて弁明する。
「すみません、違うんですよ。実は兄から頼まれ事をされたんですが……。」
「頼まれ事?」
 身を乗り出し興味深そうな顔をする濱田に、神崎はやれやれと溜息をついた。彼は他人の問題に首を突っ込むのが大好きなのだ。
「交通課の女の子に人気のある店を調べて欲しいって言うんですよ。」
「そんなの調べてどうすんだ?」
「兄の会社の若い連中と、食事の場をセッティングしたいのだそうです。」
「おおっ、合コンってぇヤツかっ!」
 途端に濱田がにやにやとする。
「それなら早川に聞いてみたらどうだ?」
「それは……。」
 途端に神崎は口ごもった。確か彼女が以前いたのは少年課であったし、現在交通課の婦警と付き合いがあるようには思えない。それに後輩の同僚にこんな話を持ちかけて、安っぽい男に見られでもしたら情けないではないか。
 神崎の様子に、濱田がははん、と、胸中を察した。
「俺が交通課に行って聞いといてやってもいいぞ、おまえもそろそろ身を固めた方がいいしな。刑事のかみさんはやはり婦警が一番だ。その合コンには行くんだろう?」
「ええ、多分。」
「まあ、任せておけ。」
 濱田は神崎の肩をぽん、と、叩いた。
「捜査会議が始まりますよ!」
 二人に向かって叫ぶ早川の声で、神崎は慌てて席を立った。

:::::::::::::::::::::

<叢雲掲示板>
◆一言残してくれると嬉しいな(^O^)
http://www.ad-office.ne.jp/cgi-bin/bbs/ad1.cgi?8429maki

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索