<コメント>
 犯人、この人だったんですね!いやあ、びっくり。来栖君、やられちゃうんでしょうか?(敢えてひらがな・意図あり…笑(^_^;))実は書くときにあまり最後まで設定しないで書き始めます。書いてるうちに、この人が犯人になって、自分でも「ああ、そうだったのかぁ…」みたいな。神崎さん、アキラ君、みんなその場の思いつきで登場。それで300枚でおさまるんだから器用なヤツだなぁ、自分。(自画自賛?)

:::::::::::::::::
<本文>

 自分との約束を、彼が素直に守ると初めから期待していたわけではない。
(やっぱし、すっぽかされたようだなぁ……。)
 須刈アキラはそう思いながらも夜まで待って、来栖の家に電話をかけてみた。彼の母親は、冷たい口調で「土曜から館山の友人宅に行っていて、いつ帰るかわからない。」とだけ答えた。
 その時少し、彼は嫌な予感がして館山の友人の名を聞き出そうとしたが、母親はわからないと言う。仕方なくその場は電話を切り、月曜日、直接本人を問いただすことにしたのだった。
 しかし月曜になっても、来栖は学園に姿を現さなかった。
 水曜日頃になってようやく、彼の両親が警察に捜索願を出したらしい、と、アキラの耳にも噂が入ってきた。
「秋本、おまえ神崎刑事の携帯番号知ってるか? 」
 昼休み、体育館で学園祭の準備をしていた遼にアキラが声をかけた。
「えっ、ええ。わかりますよ。」
 彼は上着のポケットから自分の携帯を取り出す。
「なんか、わかったんですか? 」
 何故か遼の手伝いをしていた優樹が、興味深そうにアキラの側にやってきた。
「日曜日、あいつと会う約束をしてたんだがすっぽかされてね。まあ、それは予想してたんだけど……。」
「来栖先輩、土曜日から行方不明らしいですね。」
 神崎の携帯番号を表示して遼が自分の携帯をアキラに渡す。
「ちょっと借りるよ。」
 アキラは場を外し神崎に電話をかけた。話の声は良く聞き取れなかったが、どうやら深刻な内容らしい。
 しばらくして、電話を切ったアキラは少し難しい顔をしていた。
「今から、神崎刑事がこちらに来るそうだ。学園祭の邪魔にならないように『ゆりあらす』で話が聞きたいというから、すまないが二人とも午後の授業をエスケープして付き合ってもらえるかな。」
「……いいですよ。でも……一体何があったんですか? 」
 携帯を受け取って、遼がアキラに聞き返す。
「来栖に、何かあったら俺のせいだ。」
 そう言ったアキラの顔は、かつて二人が見たことのない苦渋の表情をしていた。

 田村に車で迎えに来てもらい、三人は神崎の待つ『ゆりあらす』に向かった。
詳しい話は神崎刑事に会ってから、と、アキラは何も話さない。しかし普段と違う彼の様子に、遼も優樹も落ち着かなかった。
 三人を『ゆりあらす』のリビングで迎えた神崎の表情は硬い。
「言ったはずだ、須刈君。」
「軽率でした、申し訳ありません。」
 アキラは素直に神崎に詫びる。
「来栖先輩に何かあったのか? 俺達にもわかるように説明してくれよ。」
 優樹の問いに、神崎が小さく溜息をついた。
「来栖君は、石膏像の制作者の話を須刈君から聞いて、思い当たる人物に会いに行ったのかも知れないんだ。」
「多分何か切り札を掴んで、取引でも持ちかけるつもりだったんだろうな。あいつの性格はわかっていたはずなのに……。」
 アキラが唇をかむ。
「あんなヤツ、どうなろうと勝手じゃないか。」
 面白くなさそうに呟いた優樹を、遼がきつい目で睨んだ。
「来栖先輩がどんな人間であろうと、君にそんなことを言う資格はない。僕も彼の事はあまり好きじゃないけど、だからといってどうなってもいいと言うことではないだろう? 君はそんな風に思うのかい? 」
「……悪かった、もう言わないよ。」
 遼の言葉におとなしく従う優樹を見て、神崎は、少し意外そうな顔をした。
(どうやらお互いに自分の居場所を見つけたようだな……。)
 しかし、今はそんなことを微笑ましく思っている場合ではない。
「須刈君から電話をもらってすぐに、館山署の少年課から彼のパソコンのデータをコピーしてもらってきたよ。」
「彼の友人関係は、もう調べたんですね? 」
 アキラの言葉に神崎は、苦々しそうに笑う。
「申し訳ないことに、警察は事件性のない行方不明者の捜索にはあまり熱心じゃないんだ。データはまったく手つかずでね、急いで全員に当たってくれるように頼んできたから、そっちは任せてくれたまえ。あとは、そうだな……。彼がどんな人物を心当たりにしたのかわかると絞り込めるんだが、何か知らないかい? 」
「来栖は自己顕示欲の強い男ですから、どこかに必ず、何か形跡を残しているはずです。秋本は何か聞いていないか? 」
「いえ、何も。先輩は最近、僕にあまり近づかなかったし……。」
「そう言えば俺も少し気になっていたんだった。ヤツと何かあったのか? 」
 遼は少し決まり悪そうに目を臥せた。
「別に、大したことじゃありません。館山の画材屋で先輩に会った時、ちょっと嫌がらせのようなことをされて……一緒にいた大貫の叔父さんにきつく注意されたんです。」
「何をされたんだよ。」
優樹が真面目な顔で問いただす。
「だから、大したことじゃないって言ってるだろう? いつものように、モデルになれって迫られただけさ。」
 顔を上げて笑顔をつくろうとする遼を見ながら、アキラは腕を組み考え込んだ。
「来栖のことだ、秋本がらみだと思ったが……。そうだ、ヤツの仲間の掲示板を見てみようか。何か書いてあるかも知れない。」
「その掲示板なら、今警察で調べているところだよ。手掛かりがあれば私に連絡があるはずだ。」
 そう言う神崎に、アキラはおもむろに上着の内ポケットから手帳を取りだし広げて見せた。
「裏アドレスですよ。そのホームページには裏URLがあるんです。そこではちょっと、表向きに出来ないような書き込みや取引をしていて、パスワードが必要なんですが……。」
「君は開くことが出来るんだね? 」
 かなわないな、というように神崎は肩をすくめる。
「篠宮、おまえパソコンあるだろう? ちょっと貸してもらえるかな。」
「悪ぃ! 先輩。 俺のパソコン、もうかなり前から壊れてるんだ。直せば使えると思うけど。」
 どういう訳か優樹はパソコンが苦手だった。と、いうよりはいじると必ずと言っていいほど動作不良を起こしてしまう。バイクのメンテナンスや家電品のハード面の修理は得意だったが、ソフトに関しては必要最低限の事しかやらないため、たぶんウイルスにでもやられたのだろう。
「困ったな、修理してる時間なんてないぞ。仕方ない、急いで寮に戻って……。」
 アキラが席を立ちかけたとき、優樹が思いついて声をあげた。
「そういえば叔父さんのところに一台あった。俺のと使い方が違うからいじったことはないけど、このペンションのホームページを作ってるくらいだし、使えるんじゃないか? 」
「よし、直ぐに貸してもらおう。」
 神崎はそう言うと、アキラと顔を見合わせ頷いた。

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★週末です。長いけど読んでね。
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