私立むらくも高校怪奇譚 1(第44回)
2003年9月27日<コメント>
台風も去って、やっと天気も回復したと思ったら、もう秋も深まりデパートでは冬の装い。季節が変わるのは早いですね。明日は娘の運動会。晴れそうでよかった。
:::::::::::::::::::::
<本文>
展示用の長机に掛ける布は思いのほか重い。こんな事なら最初から誰かに手伝わせれば良かったと、来栖弘海は一旦布の束を床に置き、手すきの者を探して辺りを見渡した。
「手伝ってやろうか? 来栖。」
「……結構ですよ、アキラさん。」
腕を組んで自分を見下ろすアキラを、彼は睨むように見上げた。
「俺に、何か用ですか? 」
「まあ、ね。実は少し聞きたいことがあるんだが……。」
一瞬、来栖の表情が硬くなる。アキラは目線を下げるために腰を落とし片膝をついた。
「そう、警戒するなよ。聞きたいのは、おまえのやってるガレージキットの事さ。ネットの仲間と集まって色々やってるんだって?制作とか販売とか……。」
「お生憎様。知られて困るような悪質販売なんか、してませんよ。なんなら調べてみますか? 」
間近に迫るアキラから目線を外すように、彼は顔を背けた。
「ああ、是非調べさせてくれるかな。出来れば君にも協力を頼みたいんだが。」
来栖は目線を避けたまま、嘲笑の笑みを浮かべる。
「冗談でしょう? 調べたければ御自分でどうぞ。」
「うーん、多分、協力してくれた方が良いと思うよ。俺は、この学園に関係するその趣味の人間が他にいないか探したいだけでね。あまり的はずれな調べ方をして、君の大事な御仲間に迷惑を掛けたら悪いだろう? 」
アキラの柔らかな言い方の裏には、有無を言わせない威圧感がある。それに逆らいきれる自信が、来栖にはなかった。
「思ってたとおり、あんたは狡い人だ。」
「君に言われたくないねぇ。ところで何時なら時間があるかな。なるべく早くがいいんだが。」
「……今週末、日曜の午後ならいいですよ。それまでは忙しいので無理です。」
「OK! 俺のパソコンで用が足りるかな? 」
「アキラさん、Macでしょう。自分のノート、持っていきますよ。目的が何かは知りませんが、メンバーのデータが必要なんでしょう? 」
「そういうこと。訳が知りたけりゃその時教えてやるからさ、日曜の午後に待ってるよ。じゃあな。」
アキラはその場を立ち去り掛けたが、思いついてまた、彼に声を掛けた。
「それ運ぶのなら秋本、呼んできてやろうか? 」
いくら遼が彼を嫌っているとはいえ、仕事となれば話は別だ。しかし来栖は慌てて首を横に振った。
「おや? ストーカーらしからぬ反応だな。秋本のことは諦めたのか? 」
「言ったでしょう、忙しいんですよ! 用が済んだら出てってください。」
ふうん、と、疑わしそうにアキラは彼を見たが、それ以上は何も言わなかった。
その姿が消えるのを待って、来栖は布の束をようやくパネル横まで運び、同じクラスである佐野のところに行った。
「なあ、佐野。アキラさんはいったい何を調べてるんだ? 」
誰彼の隔てなく同じ態度で接する佐野は、来栖に対しても特に構えた口の利き方はしない。だがその分、隠し事が出来ない性格で、聞かれたことは相手を選ばず答えてしまう。
「須刈は例の石膏像を作った人間を調べてるんだよ。警察は最初、美術品の制作者から当たってたんだがどうやらそうじゃなくて、フィギュア関係の人間らしいんだな。つまりおまえと同じ畑の人間さ。だからそれを聞きたいんだろ。」
「……なるほどね。」
もし自分が先に有力な手掛かりを得ることが出来れば、そのカードを上手く利用できるかもしれない。
(こいつは面白そうだ……。)
蛇のような執念深い目で、彼は遼を眺めた。
:::::::::::::::::::::
★来栖君、あんたいい加減にしなさい!(笑)
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台風も去って、やっと天気も回復したと思ったら、もう秋も深まりデパートでは冬の装い。季節が変わるのは早いですね。明日は娘の運動会。晴れそうでよかった。
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<本文>
展示用の長机に掛ける布は思いのほか重い。こんな事なら最初から誰かに手伝わせれば良かったと、来栖弘海は一旦布の束を床に置き、手すきの者を探して辺りを見渡した。
「手伝ってやろうか? 来栖。」
「……結構ですよ、アキラさん。」
腕を組んで自分を見下ろすアキラを、彼は睨むように見上げた。
「俺に、何か用ですか? 」
「まあ、ね。実は少し聞きたいことがあるんだが……。」
一瞬、来栖の表情が硬くなる。アキラは目線を下げるために腰を落とし片膝をついた。
「そう、警戒するなよ。聞きたいのは、おまえのやってるガレージキットの事さ。ネットの仲間と集まって色々やってるんだって?制作とか販売とか……。」
「お生憎様。知られて困るような悪質販売なんか、してませんよ。なんなら調べてみますか? 」
間近に迫るアキラから目線を外すように、彼は顔を背けた。
「ああ、是非調べさせてくれるかな。出来れば君にも協力を頼みたいんだが。」
来栖は目線を避けたまま、嘲笑の笑みを浮かべる。
「冗談でしょう? 調べたければ御自分でどうぞ。」
「うーん、多分、協力してくれた方が良いと思うよ。俺は、この学園に関係するその趣味の人間が他にいないか探したいだけでね。あまり的はずれな調べ方をして、君の大事な御仲間に迷惑を掛けたら悪いだろう? 」
アキラの柔らかな言い方の裏には、有無を言わせない威圧感がある。それに逆らいきれる自信が、来栖にはなかった。
「思ってたとおり、あんたは狡い人だ。」
「君に言われたくないねぇ。ところで何時なら時間があるかな。なるべく早くがいいんだが。」
「……今週末、日曜の午後ならいいですよ。それまでは忙しいので無理です。」
「OK! 俺のパソコンで用が足りるかな? 」
「アキラさん、Macでしょう。自分のノート、持っていきますよ。目的が何かは知りませんが、メンバーのデータが必要なんでしょう? 」
「そういうこと。訳が知りたけりゃその時教えてやるからさ、日曜の午後に待ってるよ。じゃあな。」
アキラはその場を立ち去り掛けたが、思いついてまた、彼に声を掛けた。
「それ運ぶのなら秋本、呼んできてやろうか? 」
いくら遼が彼を嫌っているとはいえ、仕事となれば話は別だ。しかし来栖は慌てて首を横に振った。
「おや? ストーカーらしからぬ反応だな。秋本のことは諦めたのか? 」
「言ったでしょう、忙しいんですよ! 用が済んだら出てってください。」
ふうん、と、疑わしそうにアキラは彼を見たが、それ以上は何も言わなかった。
その姿が消えるのを待って、来栖は布の束をようやくパネル横まで運び、同じクラスである佐野のところに行った。
「なあ、佐野。アキラさんはいったい何を調べてるんだ? 」
誰彼の隔てなく同じ態度で接する佐野は、来栖に対しても特に構えた口の利き方はしない。だがその分、隠し事が出来ない性格で、聞かれたことは相手を選ばず答えてしまう。
「須刈は例の石膏像を作った人間を調べてるんだよ。警察は最初、美術品の制作者から当たってたんだがどうやらそうじゃなくて、フィギュア関係の人間らしいんだな。つまりおまえと同じ畑の人間さ。だからそれを聞きたいんだろ。」
「……なるほどね。」
もし自分が先に有力な手掛かりを得ることが出来れば、そのカードを上手く利用できるかもしれない。
(こいつは面白そうだ……。)
蛇のような執念深い目で、彼は遼を眺めた。
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★来栖君、あんたいい加減にしなさい!(笑)
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