<コメント>
 先日、某放送局で「19才」と言うドラマをやっていました。再放送なのですが、主演の織田裕二が若くて、とても危ない感じがよかった。「叢雲」の優樹君があんな感じだと良いかな。でも遼君のイメージにあう子がいないなぁ・・・。読んでくれている方は、どんなイメージをお持ちでしょう?アキラ君や来栖君のイメージを話してくれた友人はいるのですが。(何故この二人?)

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<本文>

 遼が心配するまでもなく、大貫は街であったことを両親に話す様子はなかった。ただ、「あの手の人間には近づくな。」とだけ彼に忠告したが、その語調にはかなりの怒りが感じられた。
 この週末は客がないといって夜からは田村も加わり、いつもの宴会になる。ただ、以前と違って最後には皆黙り込み、今は亡き江里香の想い出話となるのだった。
 あの事件からほぼ一ヶ月が過ぎ、大貫や田村夫妻の気遣いのおかげで彼の母、千絵にも徐々にいつもの元気が戻ってきたようである。遼にはそれが嬉しかった。
 翌日、昼近くなってやっと飲酒の痕跡から抜け出た田村が帰り支度をしているところに遼がやってきた。
「田村さん、僕も〈ゆりあらす〉まで乗せてってくれませんか?」
「ああ、構わんよ。優樹に用があるのかい? 」
「はい。どうしても彼に会わなければいけないんです。」
 遼は、優樹に会ってどうしても確かめたいことがあるのだ。
「そうか、それがいい。」
と、田村がにっこりと笑った。


 遼は車の中で、田村に聞きたいことがあった。しかしなかなか話を切り出すことが出来ない。
「どうした? 元気がないな。」
 後部座席の遼に、田村が声を掛けた。
 優樹と遼が、ただ行動を共にするだけの友人関係ではなく、お互いを支え合えるような強い友情を育てて欲しいと彼はずっと見守ってきた。彼にとって優樹は甥でもあり、大事な息子のようなものでもある。
「優樹は、中学に上がる少し前にお父さんを亡くしているだろう?あれからかな……あいつの正義感が、見ていて危ないくらいに表に出てきたのは。いつも理不尽なことに挑戦的で、真っ直ぐすぎるんだよ。少し周りから見ると煩わしく思うこともあるくらいにね。」
 遼は、胸の動悸を収めようと、大きく息を吸った。
「田村さん、僕は……彼に必要な人間なんでしょうか? 」
 田村が、ふっと、笑みを浮かべたのが、バックミラー越しに見えた。
「あいつは自分の中の正義や真実が解らなくなって、すぐに暴走してしまう。ストッパーになれるのは、おそらく遼君、君だけだ。」
「僕が? 」
 田村が頷く。
「何故だろうね。私には、解らないが。」
 優樹の振り下ろす切先を、止めることが出来るのは遼だけなのだと田村は思う。だが彼にもその理由が解らなかった。優樹の中にない何かを遼が持っていて、彼はそれに逆らうことが出来ないのかもしれない。
「大貫の叔父さんと田村さんは、何時から親友なんですか? 」
「そうだな、中学に入ってからだね。そのころの大貫は、家に引きこもりがちで、暗い男だったんだよ。今じゃ想像もつかないだろうけど。」
 確かに経営者の立場でありながら自ら率先して海に出てゆく大貫が、過去に田村の言うような子供だったとは思えない。
「自分の部屋で、帆船模型ばかり組み立てていたらしいんだが、中学一年の時の帆船模型コンクールで、海洋冒険小説をモデルにした大貫のジオラマ作品があまりに見事でね。その時展示会を見に行っていた私が、彼に声を掛けたんだ。」
「あっ、じゃあ〈ゆりあらす〉に置いてある帆船模型は……。」
「知らなかったのかい? 大きいのは全部大貫の作品さ。」
 遼はペンションのリビングや食堂、玄関に置いてある見事な帆船模型を思い出した。
「大貫ほどではないが、私の作品もあるんだよ。ボトルに入っているのがそうだ。」
 食堂の各テーブルの上にある、ブランディやウィスキーの中の帆船模型は、いかにも大酒飲みの田村らしい作品だ。
「話すうちに、二人とも同じ海洋冒険小説のファンだと解って、意気投合してしまったんだ。それからはずっと腐れ縁でね。彼は模型作りを私に教え、私は彼を外に連れ出すために漁をしながら民宿をしていた父の船で釣りを教えたんだ。まさかそれが元で彼があの会社を興すことになるとは思わなかったけど。」
 彼はそう言って明く笑ったが、遼は再び暗い顔になる。
「僕は、彼に何もしてあげられない。叔父さんと、田村さんのようにはなれないと思う。それが、悔しいんです。」
「私の言葉が信じられないのかい? 君は自分の価値観だけで優樹を見ている。それでは彼が気の毒だよ。目に見えるものだけが真実ではないんだ。他人を、理解なんてできはしない。出来ると思うことは傲慢だ。しかし、一人の人間として受け入れることは出来ると私は思っている。彼を信じて、受け入れてごらん。」
(優樹を信じて受け入れる……。)
 優樹に対する自分の猜疑心が、田村の言葉で消えてゆく。
(自分が自分であり続けるために、優樹は僕を擁護していたのだと疑っていた……。そんなこと、あるはずがないのに。)
 やっと、優樹の不器用なアプローチだったのだと、遼は気付いた。
「僕に出来ることはないかもしれない。でも彼を信じられます。」
 しっかりとした遼の言葉に、田村は無言で頷いた。

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★イメージは人それぞれ。これからもかゆい展開でがんばるぞ!!
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