私立むらくも高校怪奇譚 1(第37回)
2003年9月19日<コメント>
大貫氏、再登場。初登場が、かなり前なので簡単に説明しときます。(オンラインで前を調べるの、大変だものね)
大貫直人さんは遼君のお母さんの弟で、「ゆりあらす」の田村さんとは親友です。石膏像発見のよる、江里香ちゃんの説明を遼君のお母さんの代わりにしていました。遼君の良き理解者のようです。
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<本文>
「美術部ではそんな物、使いません。シリコンで型どりして樹脂を流しフィギュアモデルを作っているのは来栖先輩だけです。あの人、映画の特殊メイクアーティストを目指していて、よく美術室でモンスターのマスクとか縮小スケールフィギュアとか制作してますよ。」
「警察の方でも、犯人が被害者のマスクを型どりしていると見ている。石膏像の表面からもシリコンが見つかってね、科捜研の話では、マスクは型どりした物を使って、首から胸部にかけてと髪の造形は自分で制作したらしい。どうやら犯人は、かなりの美術的才能の持ち主のようだね。」
「来栖ならやりかねないな。」
納得がいく、と、いうように優樹が頷いた。
「優樹、十二年前来栖先輩は六歳だぜ。」
岡田が呆れて優樹を諭す。
「神崎刑事、俺たちは学園の卒業生で過去に来栖みたいなヤツがいなかったか調べてみます。それから石膏像を運んだ人物に必ず成田先生は協力しています。あの先生が自分の管理しない物を美術教室に置いたままにしておくことはあり得ませんから。」
「了解したよ、須刈くん。県警に帰ったら成田先生の事件と十二年前の事件を関連づけて捜査するように上に言ってみるよ。」
「明日、小型クルーザーのレンタルをしてる秋本の叔父さんの所に行って、成田先生がどこのクルーザーを借りたか調べてもらうつもりなんですが……旅行日程の中にクルージングというのがあったんです。」
優樹が濱田と約束したことを思い出し、アキラは席を立とうとした神崎に話しかけた。これから警察でCDを検索したとしても、直ぐには動けないだろう。先に自分たちだけで動くわけには行かない。
「そうだね、僕も同行しよう。」
報告のため神崎は濱田の前に立った。自分の判断が好結果を得て、彼は満足しているようだ。
「面子なんざくそ食らえ、だ。どんな手段を講じても、必ず犯人を捕まえてやる。いいな、神崎。」
「はい。」
一人ででも、と、今まで思っていたところがあった。しかしそうではなかった。彼にはそれが、嬉しかった。
正門まで、優樹、遼、アキラの三人が彼等を見送りに出てきてくれた。帰り際になって、神崎はわざと触れなかったあのことを、遼に聞いてみる気になった。
「君には、何が見えるんだい? 」
遼が微笑む。
「僕が見えるのは、亡くなった人の強い想いやショックが焼き付いた断片的な空間です。だから残念ながら犯人を見ることは出来ませんでした……。でも姉さんの場合は少し違います。彼女は多分、貴方のことを好きだったんだと思います。貴方がいるとき、よく見えますから。何時も貴方を見つめている……。」
神崎は目を伏せ、踵を返した。込み上げてくるものを、彼等に見られるわけにはいかなかった。
館山港から少し離れた所にある小さなマリーナに、大貫直人の経営するマリンステーション〈バウスプリット〉がある。ここではウインドサーフィン、ウェィクボード、ヨットなどの体験スクールや、小型クルーザーでのクルーズなどを行っていた。浜辺でのキャンプやバーベキューのためのレンタル用品も品揃えが豊富にある。田村のペンションの釣り客を乗せるクルーザーも、大貫が回してくれていた。
三階建ての自社ビルは、一・二階が店舗兼事務所になっていて、三階が大貫の居住区になっている。優樹と遼は、田村と一緒に何度か遊びに来たことがあるが、一人暮らしには広すぎて、と、何時も大貫は笑っていた。確かに彼等が招かれたリビングは、仕事柄多くの来客を迎えるためか、かなりの広さがある。
「忙しいところを、申し訳ありません。」
神崎の丁寧な挨拶に、とんでもない、と、大貫は手を振った。
「忙しいのは従業員だけで、私の方はそれほどでもないんですよ。おっと、こんな事を言うと専務に怒られるかな。」
日に焼けた健康的な顔で明るく笑う大貫に、神崎は好印象を持った。遼の叔父だと言われれば、どことなくその面影があるような気もする。
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<叢雲ご意見掲示板>
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大貫氏、再登場。初登場が、かなり前なので簡単に説明しときます。(オンラインで前を調べるの、大変だものね)
大貫直人さんは遼君のお母さんの弟で、「ゆりあらす」の田村さんとは親友です。石膏像発見のよる、江里香ちゃんの説明を遼君のお母さんの代わりにしていました。遼君の良き理解者のようです。
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<本文>
「美術部ではそんな物、使いません。シリコンで型どりして樹脂を流しフィギュアモデルを作っているのは来栖先輩だけです。あの人、映画の特殊メイクアーティストを目指していて、よく美術室でモンスターのマスクとか縮小スケールフィギュアとか制作してますよ。」
「警察の方でも、犯人が被害者のマスクを型どりしていると見ている。石膏像の表面からもシリコンが見つかってね、科捜研の話では、マスクは型どりした物を使って、首から胸部にかけてと髪の造形は自分で制作したらしい。どうやら犯人は、かなりの美術的才能の持ち主のようだね。」
「来栖ならやりかねないな。」
納得がいく、と、いうように優樹が頷いた。
「優樹、十二年前来栖先輩は六歳だぜ。」
岡田が呆れて優樹を諭す。
「神崎刑事、俺たちは学園の卒業生で過去に来栖みたいなヤツがいなかったか調べてみます。それから石膏像を運んだ人物に必ず成田先生は協力しています。あの先生が自分の管理しない物を美術教室に置いたままにしておくことはあり得ませんから。」
「了解したよ、須刈くん。県警に帰ったら成田先生の事件と十二年前の事件を関連づけて捜査するように上に言ってみるよ。」
「明日、小型クルーザーのレンタルをしてる秋本の叔父さんの所に行って、成田先生がどこのクルーザーを借りたか調べてもらうつもりなんですが……旅行日程の中にクルージングというのがあったんです。」
優樹が濱田と約束したことを思い出し、アキラは席を立とうとした神崎に話しかけた。これから警察でCDを検索したとしても、直ぐには動けないだろう。先に自分たちだけで動くわけには行かない。
「そうだね、僕も同行しよう。」
報告のため神崎は濱田の前に立った。自分の判断が好結果を得て、彼は満足しているようだ。
「面子なんざくそ食らえ、だ。どんな手段を講じても、必ず犯人を捕まえてやる。いいな、神崎。」
「はい。」
一人ででも、と、今まで思っていたところがあった。しかしそうではなかった。彼にはそれが、嬉しかった。
正門まで、優樹、遼、アキラの三人が彼等を見送りに出てきてくれた。帰り際になって、神崎はわざと触れなかったあのことを、遼に聞いてみる気になった。
「君には、何が見えるんだい? 」
遼が微笑む。
「僕が見えるのは、亡くなった人の強い想いやショックが焼き付いた断片的な空間です。だから残念ながら犯人を見ることは出来ませんでした……。でも姉さんの場合は少し違います。彼女は多分、貴方のことを好きだったんだと思います。貴方がいるとき、よく見えますから。何時も貴方を見つめている……。」
神崎は目を伏せ、踵を返した。込み上げてくるものを、彼等に見られるわけにはいかなかった。
館山港から少し離れた所にある小さなマリーナに、大貫直人の経営するマリンステーション〈バウスプリット〉がある。ここではウインドサーフィン、ウェィクボード、ヨットなどの体験スクールや、小型クルーザーでのクルーズなどを行っていた。浜辺でのキャンプやバーベキューのためのレンタル用品も品揃えが豊富にある。田村のペンションの釣り客を乗せるクルーザーも、大貫が回してくれていた。
三階建ての自社ビルは、一・二階が店舗兼事務所になっていて、三階が大貫の居住区になっている。優樹と遼は、田村と一緒に何度か遊びに来たことがあるが、一人暮らしには広すぎて、と、何時も大貫は笑っていた。確かに彼等が招かれたリビングは、仕事柄多くの来客を迎えるためか、かなりの広さがある。
「忙しいところを、申し訳ありません。」
神崎の丁寧な挨拶に、とんでもない、と、大貫は手を振った。
「忙しいのは従業員だけで、私の方はそれほどでもないんですよ。おっと、こんな事を言うと専務に怒られるかな。」
日に焼けた健康的な顔で明るく笑う大貫に、神崎は好印象を持った。遼の叔父だと言われれば、どことなくその面影があるような気もする。
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