私立むらくも高校怪奇譚 1(第34回)
2003年9月16日<コメント>
阪神優勝、おめでとう!!以前にも書きましたが、自分は小学校の時から阪神ファンです。何故かというと、花形満(架空の人物)がいたからなんですね。その後愛読してた少年誌では、「わか虎」という掛布がモデルの漫画が好きで、根強く心に残る直人さんも虎の穴。ゆけーゆけータイガー、タイガー!タイガーマスク!!(ミーハーじゃないのよ)
:::::::::::::::::::::
<本文>
眺めの良い高台にあるこの墓地に、彼女の真新しい、御影石の墓石はあった。溢れんばかりの花束と、絶えることない香の煙。生前の彼女を偲ぶ者がいかに多いか思い知らされる。
「本体を見つけてやらにゃぁ、彼女も本当に成仏できんだろうなぁ。」
濱田が呟いた。頭部が見つかったことで葬式を出すことは出来たが、その身体はまだ見つかっていないのだ。
花束の中には墓前に供えるには派手ともいえる、バラや百合の華やかなものも沢山あった。今時の女子高校生が好みそうな小物やコスメセットを供えたのは後輩の女生徒かもしれない。これらを見て、江里香の両親は何を想うのだろう。
神崎もその中に花束を置き、両手を合わせた。
「濱田さんは幽霊とか信じる方ですか? たとえば成仏できない被害者の霊とか……。」
「ううむ。信じる、とまでは言わないが。自分が手に掛け殺した被害者の幽霊が枕元に立って、恐ろしくて自首してきたなんて話は良く聞くな。刑務所に入ってからも、殺した相手の幽霊が見えると言って、気が変になるヤツもいるらしいぞ。まあ、大概は罪の意識ってヤツだろうが、そうとも言い切れないこともたまにはあるそうだ。何だ? 彼女の幽霊でも見たのか? 」
「えっ、いえ、まさか。」
神崎が榊原江里香に思い入れがあることは彼を見ていれば解る。それは刑事の勘など必要ないほどあからさまだ。だからといって、濱田は立ち入ったことを聞くつもりはなかった。
「早いとこ犯人を捕まえてやらないとな、神崎。」
「……はい。」
(もしも自分に彼女が見えたなら……。)
だが冷たく光る墓石を見つめても、そこに江里香の姿は映らない。
「おい、神崎。すまんが〈ゆりあらす〉に寄ってもらえるか。」
濱田の声で、彼は我に返る。
「ええ、いいですけど。何か事件のことで新しい事が解ったんですか? 」
「いや、個人的なことでな。実は田村氏には以前から釣りの方で世話になってるんだよ。事件が解決したら一緒にと誘われているんだが、そうもいかなそうだし、一度仕事抜きで挨拶しておきたいんだ。」
「あまり長くならないでくださいよ。」
仕方ないな、と言った顔で、神崎は車に向かった。
石膏像が見つかった夜、榊原江里香の母親、秋本千絵をはじめ関係者が皆〈ゆりあらす〉に集まっていたため、濱田は警察に出向いてもらわずそこで事情徴収をすることにしたのだった。田村も千絵のことを思って快く申し出を受けた。
確かに濱田と田村は旧知の仲のようだった。おそらく十二年前の事件の時に知り合ったのだろうと神崎は思っていたが、実はそれ以前から付き合いがあったらしい。
親しげに談笑する二人の横で所在なさそうに座っていた神崎は、
「ちょっと外に出てきます。」
と、濱田に言って席を立った。
田村家の玄関を出て北にまわると、〈ゆりあらす〉の広いハーブガーデンがある。田村小夜子が丹精込めて育てた、多種多様なハーブが見事だ。種別に区切られた低い柵の間を抜け先に進むと、その向こうには山吹色のコスモスの花畑があった。風に揺れる儚げな花は美しく、少し哀しくも思える。
強い視線に神崎が振り向くと、山吹色の波の向こうから篠宮優樹が彼を見ていた。
「やあ、優樹君。学校は? 」
私服姿の彼に、神崎は尋ねた。まだ学校が終わるには早い時間だ。
「右手の怪我で、病院に通ってるんです。今日は午後から授業に出ます。」
「怪我を? 」
「バイクで、転倒したんです。」
ああ、と、神崎は微笑んだ。
「気を付けたまえ。それにしても見事なコスモスの花畑だね。山吹色のコスモスなんて、初めて見たな。」
優樹は自分の胸ほどもある花をかき分け、神崎の隣に立った。
:::::::::::::::::::::
・読んでるよ、の一言が欲しい・・・。(T_T)
<叢雲ご意見掲示板>
・キャラ裏設定紹介してます。感想などありましたら遠慮なくどうぞ!
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阪神優勝、おめでとう!!以前にも書きましたが、自分は小学校の時から阪神ファンです。何故かというと、花形満(架空の人物)がいたからなんですね。その後愛読してた少年誌では、「わか虎」という掛布がモデルの漫画が好きで、根強く心に残る直人さんも虎の穴。ゆけーゆけータイガー、タイガー!タイガーマスク!!(ミーハーじゃないのよ)
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<本文>
眺めの良い高台にあるこの墓地に、彼女の真新しい、御影石の墓石はあった。溢れんばかりの花束と、絶えることない香の煙。生前の彼女を偲ぶ者がいかに多いか思い知らされる。
「本体を見つけてやらにゃぁ、彼女も本当に成仏できんだろうなぁ。」
濱田が呟いた。頭部が見つかったことで葬式を出すことは出来たが、その身体はまだ見つかっていないのだ。
花束の中には墓前に供えるには派手ともいえる、バラや百合の華やかなものも沢山あった。今時の女子高校生が好みそうな小物やコスメセットを供えたのは後輩の女生徒かもしれない。これらを見て、江里香の両親は何を想うのだろう。
神崎もその中に花束を置き、両手を合わせた。
「濱田さんは幽霊とか信じる方ですか? たとえば成仏できない被害者の霊とか……。」
「ううむ。信じる、とまでは言わないが。自分が手に掛け殺した被害者の幽霊が枕元に立って、恐ろしくて自首してきたなんて話は良く聞くな。刑務所に入ってからも、殺した相手の幽霊が見えると言って、気が変になるヤツもいるらしいぞ。まあ、大概は罪の意識ってヤツだろうが、そうとも言い切れないこともたまにはあるそうだ。何だ? 彼女の幽霊でも見たのか? 」
「えっ、いえ、まさか。」
神崎が榊原江里香に思い入れがあることは彼を見ていれば解る。それは刑事の勘など必要ないほどあからさまだ。だからといって、濱田は立ち入ったことを聞くつもりはなかった。
「早いとこ犯人を捕まえてやらないとな、神崎。」
「……はい。」
(もしも自分に彼女が見えたなら……。)
だが冷たく光る墓石を見つめても、そこに江里香の姿は映らない。
「おい、神崎。すまんが〈ゆりあらす〉に寄ってもらえるか。」
濱田の声で、彼は我に返る。
「ええ、いいですけど。何か事件のことで新しい事が解ったんですか? 」
「いや、個人的なことでな。実は田村氏には以前から釣りの方で世話になってるんだよ。事件が解決したら一緒にと誘われているんだが、そうもいかなそうだし、一度仕事抜きで挨拶しておきたいんだ。」
「あまり長くならないでくださいよ。」
仕方ないな、と言った顔で、神崎は車に向かった。
石膏像が見つかった夜、榊原江里香の母親、秋本千絵をはじめ関係者が皆〈ゆりあらす〉に集まっていたため、濱田は警察に出向いてもらわずそこで事情徴収をすることにしたのだった。田村も千絵のことを思って快く申し出を受けた。
確かに濱田と田村は旧知の仲のようだった。おそらく十二年前の事件の時に知り合ったのだろうと神崎は思っていたが、実はそれ以前から付き合いがあったらしい。
親しげに談笑する二人の横で所在なさそうに座っていた神崎は、
「ちょっと外に出てきます。」
と、濱田に言って席を立った。
田村家の玄関を出て北にまわると、〈ゆりあらす〉の広いハーブガーデンがある。田村小夜子が丹精込めて育てた、多種多様なハーブが見事だ。種別に区切られた低い柵の間を抜け先に進むと、その向こうには山吹色のコスモスの花畑があった。風に揺れる儚げな花は美しく、少し哀しくも思える。
強い視線に神崎が振り向くと、山吹色の波の向こうから篠宮優樹が彼を見ていた。
「やあ、優樹君。学校は? 」
私服姿の彼に、神崎は尋ねた。まだ学校が終わるには早い時間だ。
「右手の怪我で、病院に通ってるんです。今日は午後から授業に出ます。」
「怪我を? 」
「バイクで、転倒したんです。」
ああ、と、神崎は微笑んだ。
「気を付けたまえ。それにしても見事なコスモスの花畑だね。山吹色のコスモスなんて、初めて見たな。」
優樹は自分の胸ほどもある花をかき分け、神崎の隣に立った。
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・読んでるよ、の一言が欲しい・・・。(T_T)
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