私立むらくも高校怪奇譚 1（第29回）
2003年9月10日＜コメント＞
お話は、文庫本にするとほぼ半分になりました。これから犯人像が少しずつわかってきます。優樹君と遼君の関係は？ はい、大丈夫です（笑）
美沙都ちゃんと藤堂君で学園探偵物を書いてみたいなーとか、神崎さんと須刈君で遊んでみたいなーとか、妄想。・・・いかん、本編そろそろおしまいあたりを書いているので、浮気心が。
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＜本文＞
警察が校舎内を歩き回ることに難色を示した学園側は、図書室で用のある学生に話を聞くように申し入れてきた。神崎としてもその方がやりやすい。職員室での情報集めが終われば、濱田もここにやってくるはずだ。
「ところで君達は、何時あの倉庫に調査に入ったのかな？ 」
一見、にこやかに神崎が尋ねた。
「俺たちは別に調査なんて……。」
優樹が彼の言葉を真に受け、むきになる。
「新しい指紋の中に、俺たちの物があったからでしょう？ 神崎さん。」
平静な目で彼を見つめる青年に、神崎は他の学生とは違う何かを感じた。穏やかそうな外見とは裏腹に、その瞳の奥には刑事である彼にしか解らない鋭利な刃物のような光がある
「その通りだよ、須刈くん。」
神崎はそれをやんわりと笑顔でかわした。
「石膏像の時、鑑識はあの倉庫の指紋を残らず採取しているんだ。部外者を判別するため君達の物もそのとき採取させてもらっていたはずだね。実はそのあと、参号倉庫に出入りした者はいなくて、付いていた指紋は君達と今回の発見者藤堂君に倉持君、そして成田智子先生の物だけなんだ。」
「俺たちは文化祭用のパネルを取りに行っただけですよ。二日前、午後の五時半過ぎだったと思います。倉庫に入る前に藤堂に会っていますから聞いてみてください。篠宮と秋本には手伝いを頼んだだけです。出てきたのは六時半くらいかな。外は酷い雨でした。」
藤堂は余計なことを話さないだろうと踏んで、アキラはとぼけた。
「一時間もパネルを探していたのかい？ 」
「なっ、なかなか見つからなかったんだよ。なぁ、秋本。」
おまえは何も言うなと、アキラは優樹に目配せする。
「二日前の六時半頃に倉庫を出たんだね。鍵は？ 」
「鍵はちゃんと佐野が掛けました。でも職員室に返しに行ったのは俺です。雨で酷く濡れたので、一旦寮に帰って着替えてから八時ぐらいに当直の先生に返しました。」
まるで渡り合おうとするかのように、アキラは一人で神崎の質問に答えている。他の三人は、その奇妙な緊張感に落ち着かない。
神崎は手帳に必要な情報を書き留めると彼等を順に見て、最後にアキラに目を止めた。
「子供の好奇心で余計な興味を抱かない方がいい。相手によっては、怪我では済まなくなるからね。現に一人死んでいるんだ。解ったね。」
「もちろん解っていますよ、刑事さん。」
その視線を受け止めてアキラが答える。優樹と遼は顔を見合わせ、佐野はやれやれ、と、ため息をついた。
彼等の他にも事情徴収を受けるらしい数人の学生が、図書室の外で待っていた。大体が演劇部の者だ。これでは練習に差し支えるだろうな、と、アキラは藤堂を気の毒に思った。ましてや第一発見者の倉持は、部長といえども女子学生だ。文化祭までに立ち直ることが出来るのだろうか。
「あの、アキラ先輩。先輩はもしかして神崎さんが嫌いなんですか？ 」
南棟につながる渡り廊下に出たところで遼がアキラに尋ねた。
「うん？ 何でだい？ 」
心配そうな顔の彼に、アキラは首を傾げてみせる。
「どちらかと言えば好きなタイプだな。なかなかの美形だし、背格好も綺麗だったな。服のセンスも……。」
「やめてくれよ、先輩。あの気色悪い来栖みたいな事言うのは。」
優樹が顔をしかめた。
「あはは、あいつと一緒にされたらかなわないな。冗談はさておいて信頼できそうな人だと思ったよ。」
遼がほっとしたような顔になったのを見て、優樹は安心する。彼もまた優樹と同じく神崎に好意を持っているようだ。
「警察が持っている情報がわかれば、犯人を突き止める手がかりが増えるんだけどなぁ。何とか神崎刑事が協力してくれないかな。」
「そりゃ無理だ。たった今牽制されてただろう、おまえ。」
佐野が諦めろと言うように手を振る。
「うーん。そうだ、佐野。おまえ叔父さんに頼んで神崎刑事のこと調べてみてくれよ。弱点とか、嗜好とか……。」
「まさか刑事を強請って協力させようなんて思ってるんじゃないだろうな？ 止めろよ、反対に捕まるのがおちだ。」
「……だろうね。」
アキラも本気ではなさそうだ。学生に弱みを握られるような相手を、信頼できそうだとは言うまい。
「あの、神崎さんに協力を頼むのに役立つかどうか、わからないんですけど……。もしかして神崎さんは、生きていた頃の姉さんを知っているかもしれないんです。」
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お話は、文庫本にするとほぼ半分になりました。これから犯人像が少しずつわかってきます。優樹君と遼君の関係は？ はい、大丈夫です（笑）
美沙都ちゃんと藤堂君で学園探偵物を書いてみたいなーとか、神崎さんと須刈君で遊んでみたいなーとか、妄想。・・・いかん、本編そろそろおしまいあたりを書いているので、浮気心が。
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＜本文＞
警察が校舎内を歩き回ることに難色を示した学園側は、図書室で用のある学生に話を聞くように申し入れてきた。神崎としてもその方がやりやすい。職員室での情報集めが終われば、濱田もここにやってくるはずだ。
「ところで君達は、何時あの倉庫に調査に入ったのかな？ 」
一見、にこやかに神崎が尋ねた。
「俺たちは別に調査なんて……。」
優樹が彼の言葉を真に受け、むきになる。
「新しい指紋の中に、俺たちの物があったからでしょう？ 神崎さん。」
平静な目で彼を見つめる青年に、神崎は他の学生とは違う何かを感じた。穏やかそうな外見とは裏腹に、その瞳の奥には刑事である彼にしか解らない鋭利な刃物のような光がある
「その通りだよ、須刈くん。」
神崎はそれをやんわりと笑顔でかわした。
「石膏像の時、鑑識はあの倉庫の指紋を残らず採取しているんだ。部外者を判別するため君達の物もそのとき採取させてもらっていたはずだね。実はそのあと、参号倉庫に出入りした者はいなくて、付いていた指紋は君達と今回の発見者藤堂君に倉持君、そして成田智子先生の物だけなんだ。」
「俺たちは文化祭用のパネルを取りに行っただけですよ。二日前、午後の五時半過ぎだったと思います。倉庫に入る前に藤堂に会っていますから聞いてみてください。篠宮と秋本には手伝いを頼んだだけです。出てきたのは六時半くらいかな。外は酷い雨でした。」
藤堂は余計なことを話さないだろうと踏んで、アキラはとぼけた。
「一時間もパネルを探していたのかい？ 」
「なっ、なかなか見つからなかったんだよ。なぁ、秋本。」
おまえは何も言うなと、アキラは優樹に目配せする。
「二日前の六時半頃に倉庫を出たんだね。鍵は？ 」
「鍵はちゃんと佐野が掛けました。でも職員室に返しに行ったのは俺です。雨で酷く濡れたので、一旦寮に帰って着替えてから八時ぐらいに当直の先生に返しました。」
まるで渡り合おうとするかのように、アキラは一人で神崎の質問に答えている。他の三人は、その奇妙な緊張感に落ち着かない。
神崎は手帳に必要な情報を書き留めると彼等を順に見て、最後にアキラに目を止めた。
「子供の好奇心で余計な興味を抱かない方がいい。相手によっては、怪我では済まなくなるからね。現に一人死んでいるんだ。解ったね。」
「もちろん解っていますよ、刑事さん。」
その視線を受け止めてアキラが答える。優樹と遼は顔を見合わせ、佐野はやれやれ、と、ため息をついた。
彼等の他にも事情徴収を受けるらしい数人の学生が、図書室の外で待っていた。大体が演劇部の者だ。これでは練習に差し支えるだろうな、と、アキラは藤堂を気の毒に思った。ましてや第一発見者の倉持は、部長といえども女子学生だ。文化祭までに立ち直ることが出来るのだろうか。
「あの、アキラ先輩。先輩はもしかして神崎さんが嫌いなんですか？ 」
南棟につながる渡り廊下に出たところで遼がアキラに尋ねた。
「うん？ 何でだい？ 」
心配そうな顔の彼に、アキラは首を傾げてみせる。
「どちらかと言えば好きなタイプだな。なかなかの美形だし、背格好も綺麗だったな。服のセンスも……。」
「やめてくれよ、先輩。あの気色悪い来栖みたいな事言うのは。」
優樹が顔をしかめた。
「あはは、あいつと一緒にされたらかなわないな。冗談はさておいて信頼できそうな人だと思ったよ。」
遼がほっとしたような顔になったのを見て、優樹は安心する。彼もまた優樹と同じく神崎に好意を持っているようだ。
「警察が持っている情報がわかれば、犯人を突き止める手がかりが増えるんだけどなぁ。何とか神崎刑事が協力してくれないかな。」
「そりゃ無理だ。たった今牽制されてただろう、おまえ。」
佐野が諦めろと言うように手を振る。
「うーん。そうだ、佐野。おまえ叔父さんに頼んで神崎刑事のこと調べてみてくれよ。弱点とか、嗜好とか……。」
「まさか刑事を強請って協力させようなんて思ってるんじゃないだろうな？ 止めろよ、反対に捕まるのがおちだ。」
「……だろうね。」
アキラも本気ではなさそうだ。学生に弱みを握られるような相手を、信頼できそうだとは言うまい。
「あの、神崎さんに協力を頼むのに役立つかどうか、わからないんですけど……。もしかして神崎さんは、生きていた頃の姉さんを知っているかもしれないんです。」
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