<コメント>
 なんだかアキラ君いいトコ取りです。しかし神崎君再登場までは彼がいないことには話が進まないんです(笑)
 結構行き当たりばったりの設定・・・。ボロが出てたら教えてください(大汗)

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<本文>

 出所は聞かないでくれ、と、前もって口止めしたところを見ると、おそらく教師の誰かからコーヒー豆でも餌に聞き出したのだろう。アキラの話は石膏像についての詳しい話だった。
「あの石膏像はこの高校の三十年前の卒業生で、行田康平と言う人が二年前に送った物だと事務の記録から解ったんだ。ところが彼は今、飛騨の方で陶芸家をしてて、石膏像は造ったこともないし、送った覚えも無いという。学生時代から彼の専攻は陶芸で、ブロンズ像、石膏彫刻の制作どころか人物は全く対象外だったらしい。」
 遼と優樹は顔を見合わせた。
「事件の犠牲者を偲んで、と、手紙が添えられていたそうだけど、あまりにも行方不明の女子学生にそっくりで、気味悪がった先生方が地下の倉庫に片づけてしまった。」
 優樹が身を乗り出す。
「警察に届けなかったんですか?」
「届け出は出したそうだ。だけど当時その行田という人が丁度海外に行ってて、確認を取らないまま今まで放置されてしまった。添えられていたという手紙も見つからないそうだが、警察の調べでは行田氏は完全に無関係らしいね。」
「じゃあ、二年前に確認がとれてれば・・・。」
 遼の言葉にアキラが頷く。
「もっと早く、お姉さんは見つかってたかもしれない。」
 遼が顔を手で覆うのを見て、泣いているのかな、と、優樹は少し心配になる。アキラは話を続けた。
「何しろ十年も経ってからだったし、証拠としての価値が薄いと思われたんだろうね。でも犯人は、見つけてもらいたくてわざわざ倉庫から美術室に石膏像を運んだんじゃないかな?」
「えっ?何でそんなことを・・・?」
 解らないという顔の優樹が面白くてたまらなかったが、アキラは遼の気持ちをくんで努めて冷静になろうとした。
「殺人の時効がさ、確か十五年なんだよね。十年経っても捕まらない犯人は、自分のしたことを思い出して欲しかったんじゃないかな?」
「そんなん、許せねぇよ!」
 いきなり優樹は立ち上がり激しく拳を机に叩きつけた。その勢いでコーヒーカップがひっくり返る。
 今、自分が言いたかった言葉を先に優樹に言われて、遼は驚いて彼を見た。顔を紅潮させ本気で怒っている優樹に、遼は一瞬自分の怒りをわすれそうになる。
(いつもそうなんだ。)
 ヴィジョンを視るようになって、遼は素直な感情を表に出すことさえ出来なくなっていた。だからこそ彼の気持ちを代弁するかのようにありのまま感情的になれる優樹に、何時しか小さな泡立ちのような焦燥感を抱くようになったのだ。しかし今更簡単に自分を変えることは出来ない。
『関係ない。』
 傷つけると解っていて妬ましさから口をついて出た言葉だ。そうだ、自分は彼が妬ましかったのだ。
「おいおい、おまえが熱くなったら秋本が困るだろう。」
 交錯する感情に言葉が見つからない遼に、アキラが助け船を出した。
「あ、悪い。こういうトコが良くないんだよな。何時も先に熱くなるから・・・。」
「ずるいよ。何で君が謝るんだよ。悪いのは僕の方なのに・・・!」
「えっ?ええっ!」
 遼も立ち上がり上目使いに優樹を睨む。その目には今にも涙があふれそうだ。
「いつもそうなんだ。もう、庇ってもらわなくていい。そうでなかったらいつまでたっても君と対等になれないじゃないか!」
 一瞬狼狽えた優樹だったが、遼の言葉に彼も黙ってはいられない。
「なんだよそれ。おまえ、そんな風に思ってたのかよ!信じらんねー!」
「まあ、まあ、まあ、落ちつけよ二人とも。」
 見かねてアキラが止めに入った。
「良かったねー、止めてくれる人がいて。でなきゃまた、物別れだ。それにしても初めて見たね、秋本が激高するところなんて。結構かわいい顔、するじゃない。」
 勢いを削がれた遼が赤面する。
「痴話喧嘩は後にして、とりあえず俺の話を最後まで聞いてくれるかな?」
 アキラは雑巾片手に困り顔だ。二人はおとなしく椅子に座り直した。

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<叢雲ご意見所>
・キャラ裏設定紹介してます。
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